【インタビュー】看護助手として実際に4ヶ月働いた主演・水村美咲の執念。松本動監督と語る、映画『小春日和~Indian Summer~』に込めた思い。

インタビュー

2人に1人が罹ると言われる「がん」。その重いテーマを扱いながら、観終えた後に陽だまりのような温かさが残る映画『小春日和~Indian Summer~』が公開される。

企画の原点は、自身も血液のがんと闘う精神科医・楠部知子の「今だからこそ伝えたい」という切実な想い。そのバトンを受け取った松本動監督と、主演・共同プロデューサーを務めた水村美咲さんは、いかにしてこの物語を紡ぎ出したのか。公開を目前に控えた今、制作の軌跡を振り返ってもらった。

『小春日和』というタイトルに込められた偶然と必然

――この『小春日和』というタイトルは、どの段階で決まったのでしょうか。

松本監督
僕がプロットや台本を書いていた段階で、なんとなくのイメージで仮タイトルとして付けていたんです。正式なタイトルをどうするかコアメンバーで話し合ったのですが、誰もこれを超えるものを思いつかなくて、そのまま決定しました。

―― サブタイトルの「インディアン・サマー」にはどのような意味が?

松本監督
日本には同名の既存短編映画があったので、差別化と英語圏での伝わりやすさを考えて併記しました。英語で「小春日和」を指す言葉が“インディアン・サマー”なんです。

水村
英語字幕版でも、ローマ字の「KOHARUBIYORI」と併せてこのサブタイトルを入れています。

―― 制作期間は約2年とのことですが、振り返っていかがですか。

松本監督
2023年の年末に企画が立ち上がり、プロットと脚本に1年、撮影がちょうど1年前の春でしたね。

松本監督
ラストシーンの桜ノ宮公園の桜は本当に見事でした。撮影当日の朝は曇り空で心配しましたが、いざ始めるとどんどん晴れ渡って。最高のタイミングで撮影できました。

がんを前面に出さない。エンタメとして届けるための覚悟

―― 今作は、精神科医であり女優でもある楠部知子さんの実体験が核になっています。脚本において大切にされたポイントは?

松本監督
楠部さんが企画直後に入院されたので、彼女の思いをどう反映させるかを重視しました。意識したのは「がん」を前面に押し出しすぎないこと。病気がテーマだと、どうしても「重くて暗い、お涙頂戴の映画」と構えられてしまう。でも楠部さん自身が非常に明るい方なので、笑いもあり、明日も頑張れると思えるエンターテインメントにしようと決めていました。

水村
監督は、前向きになれない人の気持ちも決して置いていかないように脚本を書かれていましたよね。

松本監督
そうです。「前向きになれ」と押し付けるのではなく、そっとしておいてほしい人や、割り切れない父親の姿も描く。綺麗事だけではないリアルを大切にしました。

看護助手という役への徹底したアプローチ

―― 水村さん演じる小春を17歳から29歳までを演じられました。感情の機微を表現する上で意識したことは?

水村
年齢によって出し方は変わりますが、一人の人間としての芯は変わりません。表面的な役作りではなく、現場で相手から受け取るものを素直に表現することを心がけました。

―― 小春が働く「看護助手」という職業についても、深く掘り下げられていますね。

水村
役作りのために、クランクインの4ヶ月前から実際に派遣で看護助手として働きました。資格がなくてもできる仕事ですが、現場の空気感や患者さんとの距離感を知りたくて。重症患者さんの病棟で「ただ生きていること」の尊さを肌で感じた経験は、小春を演じる上での大きな糧になりました。

松本監督
水村さんのシーツ交換の手つきがあまりに手慣れていたので、驚きましたよ(笑)。そのリアルさが作品に説得力を与えてくれました。

ダウン症の弟という設定に込めた、監督の映画観

―― 劇中で印象的だったのが、小春の弟・(そら)くんの存在です。

松本監督
僕は以前、障がいのある方々をテーマにした映画を撮った際、今の映画制作が「障害者がいない前提」で作られていることに違和感を覚えたんです。特定の役割を持たせる記号としてではなく、日常の一部として当たり前にそこにいる存在として描きたかった。だから最初から「ダウン症の弟」として脚本を書きました。

水村
くんを演じた山岡孝平くんは現場のムードメーカーでした。妹役の千原ゆらちゃんとも自然に手を繋いで歩いていたりして。演出ではない、本物の家族のような空気感が映像にも現れていると思います。

リアリティを追求した17歳の回想とライブシーン

―― 劇中では小春の17歳当時の回想シーンがありますが、当時の流行なども取り入れられているそうですね。

水村
はい。つけまつげやポニーテール、シュシュといった当時のスタイルを再現しました。小道具として使ったキツネのおこじょのようなぬいぐるみも、実は私の実家から持ってきたものなんです。今の流行りとは違う、当時の「ピタッとした制服の着こなし」なども古着屋さんで探してこだわりました。

―― お笑いライブでのシーンも非常に熱気がありました。

松本監督
あのシーンは実際の高校生たちの中に混ざって小春を配置し、みんなで一緒になって盛り上げてもらいました。映画終盤、ファンだったお笑い芸人と再会する場面は、真実を小春だけしか知らないという切なくてぐっとくるシーンになっています。

大阪の街への感謝と、作品に込めた願い

―― 今回、大阪でのロケが中心だったそうですね。

松本監督
瓢箪山や松原、桜ノ宮など、大阪の方々は本当に協力的で驚きました。魅力的な場所が多く、またここで撮りたいと心から思わせてくれました。

―― 最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

水村
楠部さんの「生きたい」という強い覚悟から始まった映画です。小春の成長を通して、今何かに悩んでいる方の背中を優しく押せる作品になれば嬉しいです。

松本監督
重いテーマを扱いながらも、観終えた後に清々しい気持ちになれる作品です。ぜひ劇場で、この温かな空気を感じてください。

映画『小春日和~Indian Summer~』
5/16(土)大阪:第七藝術劇場 シアターセブンにて、先行ロードショー
5/29(金)東京:池袋シネマ・ロサ他、順次全国ロードショー
企画・製作・プロデュース:楠部知子 | 脚本・監督:松本動
共同プロデュース:水村美咲 | アシスタントプロデューサー:福井由美子 |
音楽プロデュース:渡邊崇 | 助監督:鬼村悠希 | 制作担当:佃光
撮影:安田光 | 照明:落合芳次 | サウンドデザイン:西岡正巳 | 監督助手:山中太郎 |
演技事務:森野くるみ 藤元優希
主題歌:由美かおる「とまり木」
特別協力:医療法人徳洲会 松原徳洲会病院 551HORAI シネマプランナーズ イサオビル
株式会社 Made-Born-Japan協賛:鮓小桜 MAEDA REAL ESTATE 吉田シンイチ 安藤孝志
後援:一般社団法人 大阪府医師会 一般社団法人 大阪府女医会 認定 NPO 法人
キャンサーネットジャパン 公益財団法人 日本骨髄バンク 特定非営利活動法人
全国骨髄バンク推進連絡協議会 公益財団法人 大阪観光局
宣伝:とこしえ | 関西宣伝:松井寛子 | 配給:フリック | Ⓒ2026「小春日和」PROJECT
2026 年 | 日本映画 | カラー | シネマスコープ | ステレオ | 119 分
公式 HP:koharubiyori-movie.com
インタビュー・文・撮影:ごとうまき
error: Content is protected !!