【コンサートレポート】極上のエンターテインメントが咲き誇る夢の劇場へ —— 兄ーズが魅せた『ON BROADWAY』の魔法

コンサート

現役医大生でありながら、圧巻の連弾テクニックと豊かな表現力で観客を魅了し続ける双子ピアノユニット「兄ーズ(山下順一朗・山下宗一郎)」。彼らが一年前から構想を温めてきた待望のテーマ企画「ミュージカル曲」を携えたコンサートが、8月2日、大阪・住友生命いずみホールにて開催された。華やかなステージ演出、胸を打つ連弾の音色、そして温かな笑顔に包まれた1時間半の模様をお届けする。

物語の扉を開く、テーマパークさながらの演出

クラシックホール独特の格式高い空気感を心地よく裏切るように、開演前にはテーマパークを思わせる軽快で遊び心あふれるアナウンスが響きわたる。会場を包む期待感が高まる中、スポットライトを浴びて登場した二人は、ショーの主役にふさわしい赤と黒の絢爛なスーツ姿。一瞬にして満員の客席をブロードウェイの華やぐ劇場へと誘った。

1曲目を飾ったのは『Cats』の「Overture」。力強く息の合った連弾の第一音が鳴り響いた瞬間、ホール全体が緊迫感と躍動感に包まれる。続いて『La La Land』より「Another Day of Sun」、『MAMMA MIA!』、『The Greatest Showman』の「This Is Me」と、世界中で愛されるミュージカルの名曲群が演奏された。

双子ならではの呼吸がぴったり合ったアーティキュレーションと、色彩豊かな照明演出が融合し、まるで舞台上でダンサーたちが舞い踊っているかのようなステージ展開だった。

等身大の素顔

音楽の圧倒的な精度とは対照的に、曲間に繰り広げられるMCでは、彼ららしい等身大の親しみやすさが溢れていた。

中学生時代に奇術部に所属していたという順一朗が「本当はハットから鳩が出せたらよかったんですけどね」とチャーミングなダジャレを披露すると、客席からはどっと温かな笑いが巻き起こる。

また、7月20日に20歳の節目を迎えたばかりの二人。順一朗が「友達とお酒を飲みながらサッカーワールドカップ観戦でワイワイ盛り上がった」とハタチの思い出を語る一方、宗一郎は「前期試験の前日だったため早めに寝ました。当日にコンビニでお酒を買ったものの、まだ飲めていなくて…」と、医大生としての真面目な素顔を覗かせ、会場の雰囲気を和ませた。

光が織りなす「Circle」の幻想美

後半のハイライトとなったのは『Mary Poppins』の「Supercalifragilisticexpialidocious(スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス)」。演奏の途中で二人が手にしたのは、なんと鍵盤ハーモニカやトイピアノ、小さな太鼓。「実は小学1年生の妹から借りてきたんです」という微笑ましいエピソードに客席が和む。続いて、宗一郎が鍵盤ハーモニカを吹きながら客席を練り歩くサプライズ演出には、子どもから大人まで大歓声が上がった。

さらに、彼ら自身が作曲を手掛けたオリジナル曲「Circle」では、この時間だけの特別な撮影OKルールとともに、観客がスマートフォンのライトをペンライトのように掲げる演出が行われた。暗がりの中でゆらゆらと揺れる無数の光は、まるで満天の星空のよう。ピアノの優しい旋律と重なり合い、ホール内には息をのむほど幻想的で美しい一体感が生まれた。

音楽と医療、そして未来へ

アンコール2曲を含む全13曲を駆け抜けた1時間半。客席には小中学生と思しき子どもたちの姿も多く見受けられ、クラシックホールの枠を超えた「誰もが心から楽しめるエンターテインメント」が見事に体現されていた。

難病の弟への思いから医師を目指し、多忙な学業の傍らで音楽の可能性を模索し続ける兄ーズ。二人が奏でる音色には、卓越した技術だけでなく、聴く者の心に寄りそうような温かな優しさが満ちている。笑顔と感動に包まれた本公演は、彼らの音楽がこれからも多くの人々の心に光を灯し続けることを確信させる、極上のひとときとなった。

公演日: 2026年8月2日(日) 会場: 住友生命いずみホール(大阪) 出演: 兄ーズ(山下順一朗・山下宗一郎)

取材・文:ごとうまき