JAPAN THEATER「SEIMEI」大阪公演が開幕! 市川團十郎「歌舞伎をベースに日本の才能を広く伝えたい」

(左から)広井王子、SUGIZO、嶋﨑斗亜、市川團十郎、ケント・モリ
インタビュー

大阪・オリックス劇場にて上演中の、邦楽劇「JAPAN THEATER『SEIMEI』Supported by 飯田グループホールディングス」が19日(水)に開幕した。本作は、日本が誇るトップクリエイターたちが集結し、陰陽師・安倍晴明を新たなエンターテイメントとして舞台化した意欲作。初日にはゲネプロと囲み取材が行われ、主演の安倍晴明を務める市川團十郎さん、朱雀を演じる嶋﨑斗亜さん(Lil かんさい)、そして演出を手がけた広井王子さんが登壇し、本作の魅力を語った。

人間味あふれる安倍晴明の物語

本作は、陰陽道の安倍晴明を題材にしながらも、魔法的な要素ではなく、人間らしく悩みながら四神と共に悪と戦う姿を描いている。脚本を担当したのは今井豊茂さん。広井さんは「今井さんの脚本を一字一句変えずにそのまま舞台にしました。僕にとっては今井さんの本が光。その中に光をみつけて、スタッフの皆さんが結集し、キャストの皆さんが花にした舞台です。いろんな部分で新たな歌舞伎になった。若い方にも見ていただきたいです!」と語った。

また、古典的な要素と現代的な音楽や振付が融合した斬新な演出も見どころの一つ。楽曲は世界的ミュージシャンのSUGIZOさん、邦楽作曲は今藤長龍郎さん、神楽振付はケント・モリさん、歌舞伎音楽は田中傳次郎さんという豪華なメンバーが手がけている。この新しい試みに対し、嶋﨑さんは「これまでの歌舞伎にはない音楽や振付が取り入れられ、若い世代にも楽しみやすい作品になっています」とコメント。

團十郎さんは「歌舞伎という伝統を基盤にしながらも、今回は音楽や振付など、歌舞伎とは異なる分野で活躍するクリエイターたちの力を借りて、新たな彩りが加わった。我々のお芝居にも羽根が生え、皆が楽しんで舞台をやっていることが嬉しかった」と、満足げに語った。

今回初共演となった團十郎さんと嶋﨑さん。嶋﨑さんは大阪公演中に二人の距離を縮めるため、「團十郎さんと吉本新喜劇を見に行きたい」と提案し、やり取りする微笑ましい場面も。また、嶋﨑さんについて「斗亜くん以外の四神役は歌舞伎俳優ですが、斗亜くんはその中で若さとエネルギーを存分に発揮してくれている。彼を通して自分の若い頃を思い出しました」と微笑みながら話す團十郎さん。

本作には、現代社会への深いメッセージも込められている。團十郎さんは「今の世界や環境を見ると、果たして我々は明るい未来に向かっているのかと考えさせられることがあります。本作では、神々、人間、精霊が共生しながら光へ向かう姿を描いており、この時代に必要なメッセージが詰まっている」と魅力を語った。

広井さんも「歌舞伎は常に進化しています。この作品もその一つの形として、多くの方々に楽しんでいただきたいと思います」と、自信を見せた。

「JAPAN THEATER『SEIMEI』」は、伝統的な歌舞伎の枠組みを超え、新しい表現方法に挑戦した作品だ。その斬新さと深いテーマ性は、多くの観客の心に響くことだろう。「古典×現代」の融合による新しい歌舞伎の可能性を、ぜひ劇場で体感してみてほしい。公演は2月24日まで。

JAPAN THEATER『SEIMEI』

取材・文・撮影:ごとうまき