10月30日から11月9日まで開催されている東京国際映画祭 。11月1日、11月6日は『カム・アンド・ゴー』が上映されました。今回は11月1日の舞台挨拶、上映会、Q&Aのコーナーなどの模様をレポートします。
11月1日の登壇ゲスト
監督、そして俳優陣たちのぶっちゃけトークに度々笑いが起こり、会場内は終始穏やかで明るい雰囲気に包まれていた。
上映会開始前の監督、キャストの挨拶
上映前にキャスト陣からこの作品の見どころなどを聞きたかったのですが、そこにはある問題が・・・
雀々さんのさすがのトークの上手さで一気に会場が和む。さらに望月オーソンさんは
上映終了後に行われたQ&A
あっという間の2時間40分、興奮冷めやらぬままQ&Aのコーナーに。
客席からの質問ーー
なぜこのような映画を撮りたいと思いましたか? 今回初めて見ましたが、普段我々が目を逸らしてくるなるようなテーマだなと。例えば技能実習生、留学生のビザ問題、AV女優、水商売とか日本人監督であれば映画から消し去りたくなるような場面も多くあったと思いますが、このようなディープなテーマを出した動機は?
皆んな自分のことにしか興味がない、自分のことでいっぱいいっぱいで他人には興味がないんです。私はそれを批判するつもりはありませんが、これが今の現状なんですよね。 この作品ではそれぞれストーリーの登場人物たちが街ですれ違うシーンも多々ありますが、みんな気付かない。まるでパラレルワールドを生きているかのような。外国人と日本人のズレ、リアルを描いてみたかったんです。
矢田部さんーー渡辺さんはいろんな監督とお仕事をされていますが、リム監督の演出方法をどう感じられましたか?
初日、監督が迎えてくださったんですが、撮影前、監督が死神のような顔をされていて(笑 )脚本もプロデュースも演出も段取りも全てリム監督が担っていた。よくこれだけの物量を組まれたなと。尊敬します。
作品を観た感想
矢田部さんーーそれで死神のような顔になっちゃったと(笑)
(会場内笑い)
最後にリム監督から
おこぼれバナシ
今回打ち上げにてさらにキャスト、スタッフの方 からもお話を聞くことができましたので、ご紹介します。
語学学校の校長先生を演じる森本のぶ さんにお話を伺いました。森本のぶさんは11月6日の上映会のゲストとして登壇されています。
今回なんと、撮影部アシスタントのツクダさんからもお話を聞くことができました
KANSAIPRESS編集部から
今回KANSAIPRESS編集部も11月1日の上映会に参加し鑑賞しました。2時間40分という長尺の作品は普段あまり観ることがないのですが、いざ観るとあれよあれよと言う間にエンドロール。
長尺なのに飽きずにこれだけ楽しめたのは、多くの国籍の登場人物の短い物語が沢山盛り込まれて、交差し、一つの作品として成り立っている。そして作品の絶妙なテンポ感とスピード感、タイミング良く笑えるシーンやハラハラするようなシーンもあったりと観る手をどんどん引き込んでいく。ここにもリム監督の手腕が発揮されている。
日本・大阪のダークな部分というより、人間誰しもが持っているダークな部分、“闇”を描いていて、そこに人々は目を逸らさずにはいられないのではないだろうか。
例えばタレント事務所のスカウトと偽りAVのスカウトだったとか、自分の妻が知らない男とホテルに入って行く所を目撃するとか、セクハラ、売春とか、、、。耳にはするけど、実際に自分の周りには起こり得ないこと、どこか遠い世界のように思っているけど、実は皆言わないだけで、そのような世界を覗いてみたい、もっと言えば、ごく身近な人や自分自身が経験していることだってある。
そして、この作品はダークな部分だけを描いてはいない。張良という香港人には愛する妻と娘がいて、ミャンマー留学生のミミには故郷でミミの幸せを願う母がいて、日米のハーフ ケンジも母を大切に想っているであろう部分が描写されている。誰かしら守るべき人、愛する人、大切な何かを持っていて、その大切な何かを守るために人々はあえぎもがきながら生きているのだ。
映画の中の人物達は皆んな自分のことに必死で他人に興味を示さない。そしてそれは現実世界でも変わらない。リム監督が言うようにそれが良い悪いは別にして、これが“平成から令和に変わる日本の春” 大阪を舞台にリアルに描いている。現在 時代の過渡期であるが、これも一つの象徴なのかもしれない。良い悪いは別として。
キレイな部分を多くは描いてはいないが、一つ一つの物語、登場人物から儚くも美しく、強い生命力を感じ、秀逸な作品を見せてもらえた。
そして9カ国の俳優陣を集め、ロケ地100箇所、20日間の撮影で、このような作品を作り上げてしまう偉才なリム監督。彼だからこそ、彼にしか作れない作品に今後ますます目が離せない。
取材・文/ごとうまき