【TSUKEMENインタビュー】奇跡のアンサンブルは17年の積み重ねの賜物「プレイスタイルは違えど同じ方向を向いている」

アーティスト

クラシックの枠を超え、情熱とユーモアで心を揺さぶるインストゥルメンタルユニットTSUKEMEN。TAIRIK(ヴァイオリン・ヴィオラ)、SUGURU(ピアノ)、KENTA(ヴァイオリン)の3人が織りなす音楽は世界で700公演以上を重ね、世代を問わず愛されている。5月3日(土)の神戸朝日ホール、5月4日(日)の大阪・住友生命いずみホールを皮切りに全国を巡るツアー『Re:EMOTION』は、「新たに芽生える感情」をテーマに、オリジナル曲やクラシック、映画音楽のアレンジで新たな感動を届ける。本インタビューでは、ツアーの魅力や3人の絆、音楽への想いを語っていただきました。

『Re:EMOTION』について

── コンサートツアー『Re:EMOTION』のテーマや込められた意味を教えてください。

TAIRIK
『Re:EMOTION』は「新たに芽生える感情」という意味です。独立3年目、これまで「キャンドルのぬくもり」コンサートで温かい気持ちを届けてきましたが、今回は僕たち自身の感動や「エモい」感覚を強く打ち出したい。世の中が疲弊している今、インストゥルメンタルの「想像の余白」を活かし、聴く人が自分の中の感情を見つめ直せるコンサートを目指しています。

SUGURU
歌詞がないインストゥルメンタルは、聴く人それぞれの感情を呼び起こします。「エモい」は人によって異なる感覚。だからこそ、僕らが心から「これを伝えたい」と思うものを発信し、共感や新たな発見につなげたいですね。

──これまでのツアーとの違いや、選曲・パフォーマンスの特徴を教えてください。

KENTA
コロナ禍では地方のファンの皆さんにも寄り添うコンサートを意識してきましたが、今回は僕たちが「エモい」と感じるものを主観的に表現。技術面では「歌ではできない、楽器ならでは」のパフォーマンスを追求しています。選曲は、クラシックや、アップテンポなオリジナル曲が中心になりそうです。新曲『Re:EMOTION』はツアーのテーマを象徴する一曲として3人で作りました。

── 皆さんがこれまでに影響を受けたアーティストや“エモい”体験は?

TAIRIK
クラシックを幼少期から学んできて、名曲と呼ばれるものは誰よりも演奏してきたと自負しています。なのでそういったメロディーラインは大切にしたいし、体に染みついていると思っています。

KENTA
特定のアーティストに絞るのは難しいですが、クラシックから日本の歌まで、ジャンルを問わず「心に残るメロディー」に影響されます。その時々の感動をパーツとして取り入れていますね。

SUGURU
僕もジャンルを問わず聴きますが、和音の響きに心を動かされます。クラシックだけでなく、ジャズやゴスペルのコード進行に最近は特に惹かれます。

 TSUKEMENツアーの魅力

── 2021年発売のアルバム『HAPPYキッチン』にちなんで、今回のツアーをお料理に例えるなら?

TAIRIK
スパイスカレー!今日みんなで食べた大阪の「旧ヤム邸」のカレーのように、エッジの効いたスパイスが混ざり合い、刺激的で独創的な味わい。3人の個性が一つになって、唯一無二の料理ですね。

KENTA
確かに。いろんなエッセンスが融合し、3人の個性が織りなすスパイシーな一皿なイメージかも。聴く人によって感じ方が違うのも、スパイスカレーの魅力と似ています。

SUGURU
僕は逆に、シンプルな「釜揚げうどん」です。何もつけず、素材の芯の部分を味わってもらうというイメージです。スパイスは僕らが表現することで生まれる感情だと思うのですが、純度の高い音楽を届けたいです。

──これまでで一番印象に残っているコンサートを教えてください。

TAIRIK
3月の松山公演です。お客さんが一体となって盛り上がり、めっちゃ「エモい」瞬間でした。会場全体が一つになった感覚は忘れられません。

KENTA
初期に行った鹿児島公演です。80人ほどの小さな会場で、最初は「大丈夫かな?」とソワソワしましたが、一生懸命に演奏したら予想以上に盛り上がった。「一人でも聞いてくれるなら全力で」と感じた瞬間で、その思いは今も変わりません。

SUGURU
デビュー時のサントリーホール(ブルーローズ)。緊張と拙さの中、ひたすら一生懸命やった経験が今の僕たちに繋がっています。初心を忘れず、常に進化していきたいですね。

── 初めて来られる方に最大限楽しんでもらうためのアドバイスとコンサートの魅力をお願いします!

KENTA
YouTubeやSNSで僕らの日常や音楽を見て、推し曲やメンバーを決めてくると、より楽しめます。クラシックな楽器とは思えない、想像を超えるコンサートになるはず。性別や世代を問わず楽しめる音楽はそうないと自負しています!

SUGURU
YouTubeのメンバーチャンネルで普段の僕たちも見られます。それを見て来てもらえるともっと楽しんでいただけるかと。ジャンルに縛られない演奏を17年続けてきたので、技術には自信がありますが、常に進化を目指しています。

TAIRIK
言葉で魅力を伝えるのは難しいですが、足を運んでくれた方は必ず「良かった」と言って下さいます。生の迫力と3人の一体感を体感してください。

歳月を重ねて生み出されるコミュニケーション

── メンバーそれぞれの初めて会った時の印象と現在の印象を教えてください。

TAIRIK
(KENTAについて)高校時代にKENTAと初めて会ったとき、彼は寡黙でクールで近寄りがたい印象でした。最初は反応が薄く「合わないかな?」と思ったんですが、時間が経つと彼から話しかけてくれて。自分が心を開けば打ち解けるタイプなんだと気づきました。こうして17年間一緒にやってきて、KENTAの変化を強く感じます。昔は感情をあまり出さない演奏スタイルでしたが、最近は自由に表現し、チームに新しいアイデアを提案してくれるようになりました。お客さんの視点に立って「これが喜ばれるんじゃないか」と冷静に俯瞰する役割も担ってくれているし、僕とは違う視点で冷静に物事を見つめる“サードアイ”のような存在です。

TAIRIK
(SUGURUについて)SUGURUとは大学で出会いました。当時から卓越した存在で彼の芯の部分に惹かれ、当時からポテンシャルの高さを感じていましたね。彼は音色の弱さを克服しようとしていた僕に、音の強さを教えてくれた存在です。プレイスタイルは対照的でしたが、それがTSUKEMENの魅力にもつながっています。それにSUGURUは本能的で、体育会系のごとく突き進むタイプ。回数を重ねてボルテージを上げ、何かを切り開くエネルギーがすごい。

SUGURU
(TAIRIKについて)損得勘定がなく、ユーモアと素朴さがあり、どんな失敗も笑いに変える明るさを持っていました。誰とでもすぐに打ち解けるタイプです。今は大人になって賢くなり(笑)、視野が広がった印象。社会や周囲のニーズを計算しながら動くようになり、情報収集も早く、音楽への情熱は昔と変わりません。少年のような心も持ち続けています。

KENTA
(TAIRIKとSUGURUについて)二人とも昔からめっちゃ魅力的で、一緒にいたいと思わせる存在です。17年経っても二人の本質は変わらず、切磋琢磨しながら成長できる関係です。

── 3人の一体感も一つの魅力ですが、普段3人でいるときに心がけていることは?

TAIRIK
一体感は17年間の積み重ねの賜物。プレイスタイルは違っても、同じ方向を向いていないと成り立ちません。ヴァイオリンやピアノの違いを超え、相手の演奏に反応する「会話」のような感覚もあります。常に相手をリスペクトし、同じ渦の中で演奏することで、一体感が生まれます。

KENTA
楽器を持っているときだけでなく、普段の会話も大事。車での移動中やリハーサルで、「最近気づいたこと」や「こういう表現どう?」と話す時間が多く、感覚を共有しています。だからライブでは「今、相手はこう感じている」と言葉なしで分かる。ファンの皆さんにも、そのシンクロ感を楽しんでほしいです。

SUGURU
プレイスタイルの違いは個性だけど、目指すものは同じ。ディスカッションを通じて「ここはこうした方がエモいよね」とか、互いのアイデアを磨き合う。観客の皆さんには、3人の息の合ったパフォーマンスから生まれるエネルギーを感じてほしいです。

──この先、3人が目指すものは?

SUGURU
3人の個性は円に例えると、それぞれ重なる部分が大事。重なりすぎると面白くなくなるので、違いを尊重しつつ、共通の目標を追求します。それを活かして、もっとオリジナル曲を作りたい。クラシックからゲーム音楽、アニメまで幅広いスタイルは、社会に出て育まれました。今後もクラシックを独自のアレンジで届け、オリジナル曲で足跡を残したいです。

インタビュー・文・撮影:ごとうまき