笑福亭ベ瓶と桂三度の「べべサンド」が大阪で初めての二人会を開催!

べべサンドのお二人(笑福亭べ瓶さんと桂三度さん)
EVENT

笑福亭べ瓶と桂三度の「べべサンド」は、東京で15回にわたり二人会を開催してきた。2021324日(水)に上方落語の聖地である天満天神繁昌亭で、大阪では初となる二人会「べべサンド初大阪」が開催される。202143日(土)には北とぴあ・つつじホール(東京)にて、ゲストの三遊亭鬼丸さんを二人がサンドするという公演「べべサンド~上方が鬼をサンドする!~」が開催予定、さらに4月には、ひこね市文化プラザにて「べべサンドin彦根」が予定されている。

二人の出会いは2014年「NHK新人落語大賞」の本選に遡る。後に本選に出場したメンバーで落語会が開かれ、その会を見ていた席亭がべ瓶さんと三度さんとの二人会を提案。そこから定期的に二人会が開催されるようになったという。

毎公演大人気のべべサンドのお二人の公演は実力ある上方二人の落語はもちろんのこと、二人のオモローなトークにも定評がある。その人気の秘密や互いの印象を探るべく、べべサンドのお二人にお話しを伺った。取材を通して見えてきたのは、想像していた以上に互いに信頼し尊重し合う以心伝心な二人の姿であった。

べべサンドプロフィール

笑福亭べ瓶・・・2002年に笑福亭鶴瓶に入門し2004年ダイエー甲子園ホール「笑福亭鶴瓶一門会」にて初高座、2009年には「東西若手落語家コンペティション」2009年度 第5回 で優勝を飾り、2003年には東京・大阪で初の独演会「ベベコレ」を開催した。2014年、2015年には「平成26年度 NHK新人落語大賞」に決勝進出、第一回上方落語若手噺家グランプリ」では準優勝、同年には台湾にて中国語で落語をするなどグローバルな活動にも期待される実力派である。

桂三度・・・2011年に六代 桂文枝(元・桂三枝)に弟子入りし、2012年『新春! しながわ寄席』で初高座に上がる。2014年「第4回繁昌亭若手噺家グランプリ」優勝、2018年には「平成30年度NHK新人落語大賞」受賞。落語家に転身する前は放送作家、漫才コンビやピン芸人「世界のナベアツ」として一世を風靡、世間にその名をとどろかせた。また監督として映画を手がけたりと才能溢れる彼の落語は注目を浴びている。

出会いのきっかけは「NHK新人落語大賞本選」

 先述したように、二人の出会いのきっかけは「平成26年度NHK新人落語大賞 決勝戦」。二人の信頼関係が築けている理由の一つに、初めの出会いが真剣勝負の場であったことが大きいのではないかと二人は当時を振り返る。

三度さん
決勝戦では二人とも負けたんですよ。終わった後、僕に悪い点数を入れた審査員をめっちゃ睨んでたんですよ(笑)その睨んでいた所を、べ瓶さんにしっかり見られていて(笑)べ瓶さんに後で『めっちゃ怖い顔されてましたね』て言われて。

べ瓶さん
僕もその気持ちすごくわかるんですよね。負けたもの同士、お互いそこで仲間意識が生まれたというか。

ただ、三度さんのすごい所はその後にしっかり賞をとる。(※桂三度さんは2018年「NHK新人落語大賞」で大賞を受賞している)馬力があるんですよね。僕は馬力があるけれど、どうやらクラッチが悪い。(笑)

三度さん
いや、べ瓶さんはくじ運が悪いんですよ。コンテストってトップバッターは不利だと言われるじゃないですか。べ瓶さんはことごとくトップばっかりなんですよ。(今年行われた)噺家ブランプリ決勝戦では、優勝すると思っていたから、チラシに「優勝記念落語会!べべサンド初大阪」ってチラシに入れようと思っていて、普段サプライズとかするタイプじゃないけど、サプライズしちゃおうかな~なんて思ってて(笑)

 

べべサンド初大阪のチラシは三度さんが手がけた。

ーー三度さんが落語家に転身された当時、べ瓶さんはどう思われましたか?

べ瓶さん
三度さんの凄みを実感したのが、一度山のてっぺんまで行かれた方がそれを全部投げうって、弟子っこを3年間されたんですよ。それは相当な覚悟だし、それを聞いたときに、この人はただ者ではないなと、感じましたね。その時は自分が三度さんと二人会をさせて頂けるなんて夢にも思っていなかった。初めてNHK新人落語大賞の本選でお会いした時に、人に対して思う事や感性が近いなと思ったんですよね。それが嬉しくて。だから二人会の話をもらった時はめちゃくちゃ有難かったし、これは絶対トークで盛り上がると確信を持てましたね。なので必ずトークコーナーは入れましょうねと言いましたね。

実力派二人の「二人会」楽しくて面白いに決まっている!!

ーーこれまでに東京で15回二人会を開催されてきてお客さんたちの反応は?

三度さんとの二人会はドキドキ感があり楽しいとべ瓶さん

そんな二人の「二人会」は滑らなかった会はないくらいに毎席大盛況だそうだ。高座での芸風や目指している笑いの方向性は似ているものの、お互いの表現の仕方は違う。特にネタを作る部分において傑出した才能を持つ三度さんの新作落語に刺激を受けながら、二人会を盛り上げるためにあれこれと考えてアレンジを楽しんでいるとべ瓶さんは話す。

べ瓶さん
会ごとにトリを交互でしていて、最初に三度さんが高座をされる会で、凄い新作を披露されることがあるのですが、そこで僕も負けてられないと枕を長めにしたり、ネタも人情噺を入れたりして創意工夫をしています。こういったところに他の人とは味わえないドキドキ感は感じていますね。

枕(導入)が大切である

ーーべべサンドとしての二人会は大阪は初めてとのこと。これまでに東京と滋賀で開催してこられて、東西のお客さんの違いや、ご自身が意識して変えておられる部分は?

べ瓶さん
僕の場合は、基本的にネタは落語の力があるので変えないんですけど、枕(導入)の部分を意識して変えていますね。東京の落語を聞き慣れたお客さんの前でするのと10年前に落語を聞いた方の前でする場合、枕をどうするかってすごく大事なんですよね。入り方って大事で、入り口の違いを意識をしないと。滋賀県はどうしようかなって今考えているんですよ。地域によってそれぞれ違うので勉強になりますね。

自分の出来事から喋りたいと、ネタ以上に枕を大切にしているというべ瓶さん。間、スピード感や言い回しなどはさることながら、小気味よく見立ては想像力を刺激するような魅力的な語り口で、観る者をあっという間に落語の世界へと誘う魔術師のようである。4月19日のひこね市文化プラザでの公演でも滋賀県のネタを盛り込んだ枕に注目である。

ーー三度さんの芸人としてこれまでのキャリアが落語の(枕の部分)ではどのように活かされていますか?

三度さん
正直、全然活かせてないですね(笑)僕の中では全然違うんですよ。椅子に座って喋るのと座布団に座って喋るのとは全く異なっていて。二文字多いだけでお客さんに受けたり受けなかったりして、そのくらい芸人と落語の喋り方、見せ方には差があって、座布団に座るといつも発見がありますね。

どこで線引きをするかというのが大事で、つまり「普通っぽいおっさんが喋っているハナシ」なのか、「おっさんが普通に喋っているだけか」または「噺家が喋っている話し方」か。自分の転向性とキャリアを考えると真ん中ぐらいがいいかなって思っているんですよ。

なので枕の場合、普通のトークをするのではなく、上下(かみしも)を切る時やちょっとお芝居に入る時などは落語っぽく意識していますね。

この落語っぽさがテレビ番組になると一気に“クサく”なると三度さんは言う。

三度さん
前まで数字数えてたやつが急に落語家っぽく『こんにちわぁ〜』(落語家っぽい口調で)って言い出したら腹立つでしょ?

《ーー爆笑》

『お前、前まで数字言うとったやないか!』って、『何急にぶってんねん!』

ってならんように…。ちょっとずつ、ちょっとずつ時間をかけてシフトしています。

三度さんは椅子(テレビ)と座布団(落語)の切り替えの大切さをどの落語家さんよりも理解していると感じているべ瓶さんは三度さんを称賛する。

べ瓶さん
僕が一番感じたのが、べべサンドの会でなどで定期的に三度さんの高座を見させていただくんですが、「大工調べ」(江戸落語)を上方落語として披露された時があって、それを聞いたときに、この古典落語が素晴らしく良かったんですよね。三度さんの新作落語は既に完成されていて、僕なんて手も足も出ないくらい素晴らしいのですが、古典落語に振ろうと思えば振れる方なんだなと。三度さんは古典というものに関しては後発だということをご自身でも自覚されていて、そこの部分を負けないようにと幅を増やそうとされてるんだなって。その思いにも圧倒されて、僕も負けていられない(どんどん幅を広げていかないと)と刺激をもらいましたね。

桂三度は落語界に舞い降りたギフトだ!

ーーお互いの印象や思いは?

べ瓶さん
三度さんは大人なので僕を立てて下さるんですが、芸歴で言うと僕よりも全然上ですし、僕は三度さんの事を先輩だと思っています。そんな三度さんを僕は落語界に舞い降りたギフトだと思っているんですよ。これ、落語界の皆思っていらっしゃると思いますよ。だけどプライドがあるのか、恥ずかしいのか言わない。こうして声を大にして言っているのは僕が最初だと思います(笑)

取材中に何度も何度も『三度さんはギフト!』表現するべ瓶さん。

べ瓶さん
うちの師匠(笑福亭鶴瓶 師匠)は三度さんの才能を認めておられるので独演会や番組などに三度さんを呼んでおられますが、なぜもっと全体的にこの方をギフトとして生かさないのかなと。

ーーそこにはどういった理由があるのでしょうか。

べ瓶さん
例えてみるならばアレルギー反応かと。異物が体に入ってきたらアレルギーを起こすじゃないですか?そこに対して不安な気持ちがあるのではないでしょうか。僕はもう何度も体に入って慣れているのでアレルギー起こしませんが(笑)

ーー三度さんから見たべ瓶さんの印象は?

阿吽の呼吸で通じ合う仲

三度さん
とにかくべ瓶さんには甘えさせてもらっています。べ瓶さんは、僕が一言えば十わかってくれる人なんですよ。あれ、これ で話しが通じる。僕のよき理解者ですね。

息がぴったりな二人が織り成す二人会は盛り上がること間違いなし

二人の相性の良さがにじみ出るトークはお客さんも聞いていて気持ちがいいはず。

べ瓶さん
三度さんは大人なのでアンテナの量や我慢の深さと、そして僕の浅さとがちょうどエエバランスなんですよね。

「この間のあれなんですけど~」って三度さんが言うと、すぐに理解できるんです。三度さんとその感覚が合うことがすごく嬉しくて。

三度さん
べ瓶さんは落語家としては大先輩ですし、二人会の時だってすごく甘えられるし、いい意味でやり合えるんですよね。理想の二人会になっている。お互い気を遣い合うわけでもなく、後輩ぶって甘えても、僕が何を言ってもしっかりと正攻法で返してくれる。そこはお客さんも聞いていてすごく気持ちがいいのかなって感じますね。

三度さんを尊敬してやまない べ瓶さん、そんな べ瓶さんを信頼する三度さん。以心伝心な二人が互いにリスペクトし合い、良い関係性が築けているからこそお客さんに伝わり、より高い完成度となる二人会になるのではないだろうか。

 

落語は路地裏の名店である

恥ずかしながら、筆者は最近になり初めて寄席に行き落語の魅力を知った。こんなに面白いものをなぜもっと早くに知らなかったのかという後悔と、もっと落語の魅力が拡がって欲しい一方で、そもそも入口の広さに関して自身が感じていることをべ瓶さんに話した。するとベ瓶さんからは意外な答えが・・・

べ瓶さん
落語って路地裏の名店なんですよね。歌とかダンスはエンタメのメインストリートにあたる。でも一つ路地に入るとこんなに美味しいお店があるんだと気付くのが落語で、その路地裏の店を知っている人からするとその魅力がわかるけど、そこに辿り着くまでの道を多くの人が知らないんですよね。つまり「このお店はこちら」という矢印が必要で、三度さんのような矢印になってくれる人がもっと必要なんですよ。

新作落語の映画を作りたい

そんなマルチな才能を持つ三度さん、落語家に転身する前には監督として映画も製作している。かつて他のメディアで『いつか新作落語の映画を作りたい』と語っていた(2014年)記事を読んで、映画好きな筆者にとってここは触れておきたいところ。三度さんにその思いについて聞くと・・

三度さん
新作落語の映画、作りたいですね~。もともと古典落語をしようと思って入門したんですが、師匠が入門が決まった日に『自分で作っていいよ』って言ってくださって。新作落語って映画的だから、入門当初からずっと作りたいって思っていたんですよ。もう設定もできていますが・・やっぱり形にするのが難しいんですよね。

あ、ついでにここに書いてもらっていいですか?(笑)ヨーロッパ企画の上田さ~ん、映画にしたいほどの落語があるんで、是非相談に乗ってください!

べべサンド スタッフ募集!!

べべサンドのお手伝いをしてくださる方を募集します!

▶日本の伝統芸能である「落語」に触れてみたい、落語が好き、まだ落語はよく知らないけれど落語家さん達のお仕事に興味があるなど、経験は問いません。

▶お手伝い内容:べべサンドの笑福亭べ瓶さんと桂三度さんの二人会などの会場の受付業務など。

▶お手伝いしてくださる方には、なんと!桂三度さんがその方のお仕事や夢に対する助言、アイディア出しなどのサポートをしてくださるとのことです。

過去にはお笑いコンビ、放送作家、芸人、としてキャリアを重ねてこられた桂三度さんから直接アドバイスをもらえる機会は滅多にないチャンス!少しでも気になった方はお気軽に下記メールアドレスにお問い合わせください。(選考はあります)

▶お問合せ:桂三度 katsurasando@gmail.com

取材・文/ごとうまき