【インタビュー】藤井香愛、2年ぶりの新曲「重たい愛でごめん」が放つ、中毒的な情念の世界。

アーティスト

前作「純情レボリューション」から1年7ヶ月。事務所移籍という大きな転機を挟み、ファン待望の新曲「重たい愛でごめん」をリリースした藤井香愛。現代女性の本気の愛ゆえの危うさと美しさを描いた本作は、依存度200%とも言えるヘビー級のラブソングだ。しかし、この劇的なアップデートの背景には、彼女が昨年経験した「初めてのお芝居(舞台)」と、そこで得た表現力の開花があった。一人の表現者として新たな一歩を踏み出した彼女に、新曲にかける想いから、舞台裏のストイックな素顔、そしてクスッと笑える意外なプライベートまでをたっぷりと語ってもらった。

「止まっていたようで、多くの収穫があった」激動の1年7ヶ月

──1年7ヶ月ぶりの新曲、この期間は藤井さんにとってどのような時間でしたか?

藤井
そうですね、本当に久しぶりのリリースになりました。実は昨年、前事務所を退所して、現在の新しい事務所に所属するまでに約半年間のブランクがあったんです。ファンの皆さんには「どうしたんだろう」とご心配をおかけしてしまった時期でもあったのですが、私自身にとっては、新しく動き出すための大切な「準備期間」だったなと感じています。デビューしてからの7年間、まとまったお休みがほとんどないくらい突っ走ってきたので、この期間に家族旅行へ行ったり、自分を見つめ直したりすることができました。

──その期間には、プライベートで大きな別れもあったそうですね。

藤井
はい。昨年の6月に父が亡くなりました。もし以前のペースのまま、春から夏にかけて新曲のキャンペーンで全国を飛び回っていたら、きっと最期に寄り添うことはできなかったと思います。4月に容態が悪化してから6月はじめに息を引き取るまで、毎日病院へ通うことができたんです。今までなら絶対にあり得ないスケジュールだったので、まるでお父さんが「少し休んで、側にいておくれ」とギフトをくれたような、運命的な時間でした。父は私の活動を誰よりも応援してくれていたので、最後にしっかり見送ることができて本当に良かったです。

──その悲しみを乗り越え、昨年8月には三山ひろしさんプロデュースの舞台『1PPO』でお芝居にも初挑戦されました。この経験が大きかったとか?

藤井
これが本当に、私の歌手人生を変える大きな経験になりました! 7月からみっちりお稽古をして8月に本番を迎えたのですが、お芝居を経験したことで、歌へのアプローチが劇的に変わったんです。9月に開催したワンマンライブで、中島みゆきさんの「化粧」に初めて挑戦したのですが、舞台で培った感情の動かし方がそのまま歌に生きて。今まで体感したことのないような感情の高まりを感じました。客席の空気もガラッと変わって、お客様が私の歌の「物語」に引き込まれ、涙を流してくださっているのが分かったんです。これまではガムシャラに声を張って歌ってきた部分があったのですが、歌で「演じ、伝える」という本当の意味を、この舞台経験を通して掴めた気がします。まさに私にとっての「大きな一歩」でした。

依存度200%!強い芯を持った現代女性の「剥き出しの情念」

──そんな大きな進化を遂げた今だからこそ、今回の新曲「重たい愛でごめん」が生まれたのですね。最初に楽曲を聴いたときの率直な感想はいかがでしたか?

藤井
まずイントロから「英語だ!」って驚きました(笑)。歌謡曲の枠を超えたポップス寄りのメロディーラインで、すごく攻めているなと。タイトルも強烈ですが、歌詞も「視線をそらして情けないよね」とか「死ぬまで一緒にいる約束だけが欲しい」とか、相手をジリジリと攻め立てるような強いワードが並んでいます。

──及川眠子先生の作詞による、相手の魂まで渇望するようなヘビー級のラブソングです。レコーディングではどのようなディレクションがありましたか?

藤井
及川先生からは、「男にすがりつく弱い女性ではなく、強い芯のある女性として歌ってほしい」と言われました。「重たい愛でごめん」と下手(したて)に出ているようでいて、実はちょっと上から目線というか(笑)、一途すぎるが白黒ハッキリさせたいという、大人の女性の覚悟と二面性を表現することに挑戦しました。

──藤井さんご自身の恋愛観とも共通する部分はありますか?

藤井
「愛する気持ちに手抜きができない」という一途なところはすごく共感できます! ただ、私の今の“重たい愛”はすべて歌に注がれているので、もし現実で男性から同じ熱量で迫られたら……今の年齢だとちょっとしんどくて逃げちゃうかもしれません(笑)。

──カップリングの2曲も、表題曲とはまた違った愛のグラデーションが描かれていますね。

藤井
「泣かない夜をください」は、実は前作「純情レボリューション」の時にすでに頂いて温存してくださっていた大切な曲です。今回のA面候補にも挙がりましたが、時代感や今の私の声を聴いた幸耕平先生が、「今の香愛には『重たい愛〜』がA面だね」と新たに書き下ろしてくださいました。こちらはリズムに乗せるというよりは、夜の静寂のなかで語るように、喋るように歌うことを意識しています。

もう1曲の「ぜんぶ嘘ぜんぶ夢」は、運命の相手ではない男性との一夜限りの関係を描いた、かなり大人っぽいディープな世界観です。Bメロの「あなたの背骨あたり 指でなぞりながら」という歌詞には、歌いながら私もドキドキしてしまいました(笑)。表題曲の情熱とは対照的な、大人の「静かなる絶望」の温度感を楽しんでいただけたら嬉しいです。

──ミュージックビデオも非常にドラマチックで、背中が大胆に開いた赤のドレス姿が息をのむほど美しいです。

藤井
衣装の色は、楽曲を聴いた瞬間に「絶対に赤がいい」と思ってスタイリストさんに相談したら、意気投合して決まりました。実は前作の時も背中を開けたかったのですが、デザインのバランスが難しくて断念していたんです。でも及川先生からの「思い切って(お尻の割れ目が見えるくらいに!)大胆に開けた方がインパクトがある!」というお言葉が忘れられなくて。今回はデザイナーさんと試行錯誤して、紐のあしらいでバランスを取り、念願の大胆なバックレスドレスが実現しました。

──スタンドマイク(通称・ガイコツマイク)の前に立つシーンも、かつての名歌手を彷彿とさせて格好良かったです。

藤井
あのシーンは、目の前にお客様はいるけれど、その奥にいる「愛するあの人」だけを真っ直ぐに見つめている、というイメージを頭に浮かべながら視線を動かしていました。ちなみに、MVのラストに登場する壮大な崖のシーンは、「アイルランドのモハーの断崖で1泊ロケをしました!」……という設定(フィクション)です(笑)。映像の美しさと、女性らしいボディラインを意識した細かな所作にもぜひ注目してください。

──その美しいボディラインをキープするために、かなりストイックにジムへ通われているとか?

藤井
はい、週2回(忙しい時でも週1回)のトレーニングは欠かさず続けています。「ドレスが入らなくなったらどうしよう」という恐怖心もあるのですが(笑)、前作の時はダイエットに重きを置いていましたが、今回はしっかりトレーニングを重ねたおかげで、ムキムキではなく健康的で綺麗な筋肉のラインが出せるようになりました。ジムの先生が私のポスターを貼ってくださっているのですが、他の会員さんがそれを見て「こういう身体になりたい!」と言ってくださるらしくて、すごく励みになっています。

コーヒー焼酎にカワウソ、スタバ巡り──ギャップだらけの素顔

──舞台の上でのセクシーで強い姿とは一転して、プライベートはかなり個性的でアクティブだと伺いました。お酒もお好きだとか?

藤井
ドレスのために量はセーブしていますが、お酒は大好きです! 最近は家で自家製の「コーヒー焼酎」を作っています。それをロックやソーダ割りで飲むと最高に美味しくて! 特に危険なのが「牛乳割り」です。完全に大人の高級コーヒー牛乳味になるので、美味しくてグイグイ飲めちゃうんですけど、気づいた時には酔っています(笑)。

──SNSで話題のコツメカワウソの「ウーちゃん」に会うために大阪まで行かれたとか。

藤井
そうなんです! たまたま入ったカワウソカフェをきっかけにどっぷりハマってしまって。インスタで大阪に住んでいる超可愛いコツメカワウソの「ウーちゃん」を見つけて、なんと飼い主さんに直接DMを送ったんです(笑)。そこから交流が始まって、大阪でのライブ終わりに天王寺公園でお散歩させてもらったり、先日はウーちゃんが東京に来てくれたので、ファン30人くらいのオフ会に私も一ファンとして参加して、ビンゴ大会で景品を当てたりしました。いつかコラボ動画を撮るのが密かな野望です。

地元・中野への愛、そしてこれからの展望

──新たなスタートを切り、表現者としてさらに一回り大きくなった藤井さん。これからの目標や挑戦したいことを教えてください。

藤井
これまでは歌謡曲や演歌を中心に歌ってきましたが、今回の新曲を機に、より幅広い世代の方達にも聴いていただきたいです。ただ悲しみに暮れる恋愛ではなく、「こういう強い恋愛の形があってもいいんだよ」と、現代を生きる女性たちの背中をそっと押せるような、私なりの「応援歌」として届けていきたいですね。

──歌手としての具体的な目標はありますか?

藤井
ずっと目標に掲げているのが、私の地元である「中野サンプラザ」での単独コンサートです。再開発の計画が一時期白紙になって心配していたのですが、2034年の完成に向けてようやく新計画が動き出したので、私もそのステージに堂々と立てるように走り続けたいです。中野は今、100年に一度と言われる大開発の真っ最中で、これからどんどん新しく変わっていきます。私は中野で生まれ育ってこの街が本当に大好きなので、私の歌や活動を通して、中野の魅力を全国の皆さんに伝えていく「地元愛の架け橋」にもなれたらいいなと思っています。

ライブ情報

カラフルpresents浅草夏宵~極上の歌で過ごす、歌謡サマーナイト~ 7/30

【公演日時】2026年7月30日(木)、31日(金) 開場16:30開演17:00

【出演】■30日(木)津吹みゆ×岩佐美咲 ■31日(金)津吹みゆ×藤井香愛

インタビュー・文・撮影:ごとうまき