『大阪グッバイ』で新境地を見出し、 デビュー18年目を迎えた五条哲也の新作『好きさ神戸』 が2024年1月10日にリリースされた。今作は神戸を舞台に、 新たな愛の始まりを描いた物語。今回、 楽曲についてお話を聞きながら五条さんを深掘りしていきます!!
五条の新たな魅力が感じられる一枚に
── 1月10日にリリースされてから『好きさ神戸』 の人気が高まってきています。 この状況をどのように感じていますか?
デビュー18年目にして初めての感覚。 ヒットしていく時ってこんな感じなんだと実感しています。
── 何度もリフレイン……一度聴くと、 メロディーが頭から離れないんですよ。 この曲を初めてお聴きになった時はどのような感想を持ちましたか ?
前作『大阪グッバイ』に続き、 浜圭介先生に作曲をしていただきました。 浜先生からギターで弾き語りをしたデモテープが送られてきたので すが、それがもう渋くてカッコよくて。浜先生の感性、 センスも素晴らしいですよね。 歌っていくうちに先生の凄さを再認識しました。
── 作詞は荒木とよひさ先生が手がけられました。 作家の先生も毎回すごい方達ばかりですね。
デビュー曲から徳久広司先生、水森英夫先生、 杉本眞人先生や岡千秋先生など…… 偉大な先生方に作っていただいています。 毎回すごい先生方に手がけていただき、 これは歌手としてとても幸せなことだと思っています。 映画のワンシーンを彷彿させるような荒木先生が書いてくださった 今回の歌詞も気に入っています。 カッコよくキザな男性の詞を歌うのも今回が初めてです。
今作はクールとキザがテーマ
── 今作は“渋さ”が印象的ですが、 そういった部分も意識されていますか?
もともと僕は低音が苦手。 高音で声を張り上げる歌い方が得意ですし、 そういった曲も多くて。前作から“渋さ”を取り入れましたが、 今作はさらに“渋さ”を意識して歌っています。 初めはプレッシャーもあり、レコーディングでも苦労して、 2回録り直しました。
── ジャケット写真もこれまでのイメージとは違って新鮮ですね。
“クールでキザに紳士的に”をイメージして。 初めて髪の毛を短く、オールバックにして撮っていただきました。 ずっと応援してくださっている方も驚かれていました。 賛否両論あるんですけど(笑)。
── 前作は大阪が舞台で今作は神戸が舞台。次は……京都と、 期待してよいのでしょうか?
次はどうなるのか僕にも分からないのですが、 引き続き関西を舞台にした歌を歌っていきたいと思っています。 次回作も楽しみにしていただけたら嬉しいです。
── 五条さんは京都ご出身ですが、神戸にはよく行かれましたか?
20歳で上京して、30年以上東京にいて、3〜 4年前から拠点を関西に移しました。 上京するまで京都から出る機会があまりなかったんですが、「好きさ神戸」のおかげで伺う機会が増えてきました。 神戸って、おしゃれで上品な印象です。
『真夜中のヴィーナス』は1980年代を彷彿させるポップス
── 『真夜中のヴィーナス』についても教えてください。
1970年〜 80年代にアイドルが歌っていた曲を彷彿とさせるポップス。 演歌好きの方たちにも歌ってもらいやすいと思います。 こういったポップスに挑戦するのも今回が初めて。この曲は『 好きさ神戸』と比べてレコーディングはスムーズでした。 カラオケでは発散して、 好きなように歌ってもらえたら嬉しいです。
ラガーマンでバンドマンだった過去
── 五条さんのこれまでについても教えてください。 五条さんは高校時代はラグビー部に所属。1992年に上京し、 バンド活動をされていたのですね。
祖母の影響で、元々子どもの頃から演歌歌謡も好きでしたが、 僕はバンドブーム世代。10代はバンドに明け暮れていました。 そういった影響もあって、 自分で曲を作ってバンド活動をしたいと思い上京。 音楽の専門学校に通いました。 当時はボーカルではなくドラムを専攻していたんですよ。 ドラムが面白かったのでこのままバンドをしていきたいと、 東京の生活がスタート。 だけどその生活は長くは続きませんでした。
── その後、団しん也さんの付き人をされ、 歌や小林旭さんのモノマネ、 旅役者として芝居や歌で日本各地を回られたとのこと。 2003年の第14回全日本カラオケ王座決定戦に出場したことが 転機となり2007年にデビューされましたね。
デビュー18年目ですが、芸歴でいうと結構長いんですよ。 芝居や歌、いろいろ挑戦してきました。10代の頃は演歌なんて… …と思っていたのですが、 大人になって演歌を歌いたいと思うようになりました。 やっぱり子どもの頃の環境や原風景が染み付いていたのだと思いま す。
慰問先で体感した音楽の奇跡
── この18年を振り返って、 一番思い出に残っている出来事や楽曲はありますか?
沢山ありますが、4作目『ほたる川』のカップリングの『 記憶を抱きしめて』です。 この詞は作詞家の堀田良輔さんが書いてくださいましたが、 彼は生後7ヶ月から筋ジストロフィーという病と闘い、 40歳間近で天国に旅立ちました。この曲の詞は、 彼の中学時代の初恋を描いたもので、 九州の病院から生まれた愛の歌。 慰問に行った時にこの歌を知って多くの人に届けたいと、 初めてレコード会社の方にプレゼンをしました。
慰問先でも懐かしい曲を歌った時、 認知症でずっと反応がなかったおばあさんが、 パッと明るい表情になって歌い出す姿を見て、 家族が驚き号泣したことも。 奇跡のようなシーンに出くわす度に歌い続けようと……。 これまでに歌手をやめようと思うこともありましたが、 僕も歌うことを諦められないし、上手くいかない時も頑張ろう! って原動力になっています。
── 慰問にはよく行かれているのですね。
歌うことが好きなので、 デビューしてからずっと施設や老人ホームに行かせてもらっていま す。地方キャンペーンの時も1〜2箇所行っています。 逆に自分も元気をもらっているんですよ。
── これまでに歌手をやめようと思ったこともあったとのことですが、 その度に奇跡のような出来事が起こり救われたのですね。
なかなか上手くいかなかったり疲れた時、 そう思うこともありました。まだ声は出ているけれど、 声だって少しずつ衰えてくる……。同級生から別の仕事を紹介され少し落ち着いたら、と言われた時もあって、 そういうのを聞くと急に不安になる事もありました。だけど今は、 ここまで来たからにはこのまま突っ走っていこうと思っています。 仮に歌手がダメになったとしても、 違った形でずっと音楽に携わっていきたいです。
── 応援してくださっている皆さんへのメッセージと今後の目標を教え てください。
なかなかヒット曲のない五条哲也をずっと支えて応援してくださっ ている皆さまに感謝と喜んでもらいたいという気持ちでいっぱいで す。いま年齢を重ねたこともあるのか、いい車に乗りたい、 美味しいものを食べたいなどという欲がないんです。 もう悟りの境地に入っていて(笑)。 僕の歌がヒットして喜んでくれる顔を見たい。 そしてもっと僕のことを多くの方たちに知ってもらえるように頑張 りますね!
インタビュー・文・撮影:ごとうまき