これまで列車に関する歌を数多く歌ってきた歌手の大木綾子の新曲 、『会いたい、江ノ電。/江ノ電音頭』 が2023年7月26日にリリースされた。今作のテーマは「 江ノ島電鉄」。地元の江ノ島で活躍する小川コータ&とまそん の2人が楽曲を手がけ、 江ノ島の人々の交流や江ノ島電鉄の魅力を描きながら紡がれたポッ プで優しい楽曲となっている。 9月14日に開催されたKOBE流行歌ライブに出演した大木さん に楽曲について語ってもらった。 歌手生活22年を振り返ってもらいながら、 大木綾子を紐解いていく。
『会いたい、江ノ電。』で鎌倉の魅力を届ける
──これまでに列車をテーマにした楽曲を歌ってこられましたが、今 回は江ノ電。どういった経緯でこの曲が作られたのでしょうか?
小川コータ&とまそんさんは鎌倉の四季や景色、 日常などをウクレレに乗せて歌うユニットであり、AKB48さん、 ももいろクローバーZさんなどの歌手にも曲を提供しておられます。鎌倉が地元のお2人に今回、江ノ島電鉄をテーマにした楽曲を書いて いただきました。
──爽やかで懐かしさも感じられる美しいメロディーですよね。
曲の中にキラキラしたイメージが入っていて、 最初に聴いた時は嬉しかったです。恋人と一緒にいるところに、 突然雨が降ってきてベーカリーに入るのですが、 ベーカリーという言葉も地元の方だからこそ表現できる言葉。 幸せ溢れるイメージと、1人になった時の切ない女性の心をバランスよく織り交ぜた前向き な歌詞がとっても好きです。
──歌の中に出てくる場所には実際に行かれましたか?
歌う前に何度か訪れていたのでイメージが膨らみました。 鎌倉のお寺には私の恩師・水木かおる先生が眠られているので、 何か大きなイベントがある度に訪ねていて、 今回もこの楽曲をいただき、ご縁を感じますし、 また見え方が変わりました。それ以外に旅行でもよく訪れました。 食べ物も美味しいし、 小物を取り扱っている大好きなお店も沢山あって、 何度でも行きたくなりますね。
──カップリング曲の『江ノ電音頭』は『会いたい、江ノ電。』 とまた違った魅力の曲ですね。
櫓を組んで、皆さまに踊っていただけたらいいなと思っています。 この曲では日本舞踊の先生が振り付けをしてくださっています。
──大木さんはクラシックバレエからタップダンスに日舞と経験豊 富、なんでもお踊りになられます。
幼い頃から洋舞ばかりしていたので、 日本のものを勉強してお着物も着れるようになりたいとお稽古を始 めました。物心がついた頃からマイクを持って歌っていました。 4歳の時に世界大会に日本代表として出場させていただいた番組を きっかけに、クラシックバレエと歌を両輪として励み、 高校生の頃に音楽学院に特待生で入学しました。ピンク・ レディーの振り付けをされた土居甫先生に「 ジャズダンスをやってみないか」とお声がけいただき、 そこからジャズダンス、ヒップホップ、 ファンキーダンスなど沢山学ばせていただきました。 高校を卒業するときに受けたのが東京ディズニーランドの舞台ダン サー。合格し活動をしました。
──そして2004年には浪曲師 ・浪花家綾歌を襲名されます。マルチにご活躍されていますね。
興味をもつとすぐにやってみたくなるんです。 1人でいろんな役ができる浪曲は和製のミュージカルみたいだな、と 思って始めたのがきっかけ。 これまで歌った浪曲もデビュー20周年記念ベスト・アルバム『〜 綾子の夢は夜ひらく〜』に収録されています。 アルバムには自分にとって節目となった曲を入れています。 今回は幅広いジャンルの曲も収録されていて、 ジャズにも初挑戦しました。
『あなたの歌になりたい』
そして20周年記念シングル『あなたの歌になりたい』 は松井五郎先生が手がけてくださいました。歌詞を読んだ時、 私の幼い頃からの思いが書かれていて、大変感動しました。 涙で最後まで歌いきれず、胸が熱くなりました。 自分自身が歌に支えられて成長してきたので、 今後は私が皆さまに届けて寄り添えたら……。
──『あなたの歌になりたい』のカップリング曲『 さぁさ日本を咲かせましょう』はコロナ禍に生まれた曲ですよね?
コロナ禍に閉じ込められ大変だった時期、 大木さんの歌声で日本を元気にしてください! というメッセージを先生方からいただきました。 途中の童謡のメロディー“は〜るよ来い!” という言葉が入っているのも印象的で。
──歌、ダンスは大木さんにとってどのような存在ですか?
私の支え。木で言う幹。 どっちが崩れても私の心が不安定になってしまうので歌と踊りが両 輪となって大木綾子を作っています。 何か辛いことがあると歌を練習することで心がクリアになっていく 。 水木かおる先生のお弟子さんの藤かおる先生がいつもおっしゃって いた“焦らず、驕らず、諦めず″。この言葉は人生の教訓として、手帳に書き留めています。
──歌手生活22年、振り返ってみていかがですか?
デビュー5年目のときに、20年目の先輩とお話したときの当時の 気持ちを覚えています。こうして活動できているのは、 レコード会社や事務所の方々、スタッフやファンの皆さまのお陰。 感謝しかありません。 これからも止まらずに歩み続けたいと思っています。
インタビュー・文・撮影:ごとうまき