伊藤万理華と井之脇海が挑む上田ワールド『リプリー、あいにくの宇宙ね』インタビュー

インタビュー

日本放送とヨーロッパ企画の上田誠がタッグを組んだ舞台シリーズ第5弾『リプリー、あいにくの宇宙ね』が2025年6月6日(金)~8日(日) 森ノ宮ピロティホールで上演される。本作は宇宙船を舞台にしたSFアクション音楽コメディで、スペースオペラの要素をポエトリックな音楽で彩る。航海士ユリ役の伊藤万理華と、ユリのバディを自認する航海士キリト役の井之脇海のインタビューをお届けする。上田作品の舞台に初挑戦となる二人に、稽古の感触や共演者との化学反応、上田誠の独特な世界観について語ってもらった。

舞台への意気込み

伊藤


上田さんの作品には、ドラマ『時をかけるな、恋人たち』で初めて参加させていただきました。そのとき、脚本の面白さに魅了されて、「いつか舞台でもご一緒したい」と強く思っていたんです。だから今回のお話をいただいたときは、本当に念願が叶って嬉しかったです。舞台は初めてなので、どんな世界が広がるのかワクワクしています。

井之脇


僕は上田さんの映画やドラマ、舞台を観てきて、いつも「見る側」として楽しんでいました。コメディやドタバタ喜劇って、自分が演じるイメージがあまりなかったんです。だから最初は「なんで僕に?」と驚きました。でもすぐに、「これはチャンスかもしれない。上田さんの世界に飛び込んでみたい!」という気持ちが湧いてきて、すぐに参加を決めました。新しい挑戦にワクワクしています。

──ヨーロッパ企画や上田さんへの印象は?

伊藤

上田さんの作品は、日常の中にSFが溶け込んでいるのが魅力ですね。どこでタイムリープするんだろう、どこで宇宙に飛んでいくんだろうって、日常から一歩踏み出すと時空を超越する瞬間がある。それがユーモアと温かさに包まれていて、観ていて心地がいいんです。今作も、会話劇の面白さの中に人間の温かみやキャラクターの魅力が詰まっていて、上田さんらしいなと感じています。

井之脇


上田さんは「時間の魔術師」だと思っています。タイムリープや繰り返す時間など、時間を操るのが本当に上手。今回は宇宙船が舞台で、タイムリープはないけれど、独特な宇宙空間の時間の流れが描かれています。密室の宇宙船の中で、地球とは違う感覚で時間が流れているのが、台本を読んでいてもすごく面白い。日常の中のSFという点では伊藤さんと共感しますが、今回はそのスケールが宇宙にまで広がっていて、ワクワクします。

多彩なキャストとドタバタコメディ

──本作の魅力を教えてください

伊藤

キャストの多様性がこの舞台の魅力の一つです。役者、芸人、歌手と、いろんなジャンルの方が集まっていて、それが宇宙船の雑多なクルー感にぴったり。会話劇のテンポが速く、キャラクター1人ひとりが濃くて面白いんです。私の役、ユリは副航海士で、トラブルに巻き込まれながら心の声をポエトリックな歌で表現します。スペースオペラという言葉に最初は圧を感じましたが(笑)、歌い上げるというより、囁くようなリズムで感情を届けるのが新鮮で楽しいです。

井之脇


上田さんの脚本は無駄が一切ないんです。11人のキャストがワチャワチャ喋るのに、全部がキャラクターに沿ったセリフでコメディが進む。そこが本当にすごい。ドタバタコメディの楽しさはもちろん、純粋に笑える作品になる予感がします。最近はエンタメに社会的な意義が求められることも多いですが、この舞台は「劇場に来て嫌なことを忘れて、笑ってストレスを軽くしてほしい」というシンプルな楽しさに溢れています。社会風刺もスパイス程度に効いていて、言葉遊びも楽しいですよ。

──共演者の皆さんと楽しみにしていることは?

伊藤

「かもめんたる」のお二人「男性ブランコ」のお二人は芸人さんなので、コントの間や会話のレスポンスが、とても勉強になります。素で笑ってしまうんですよ(笑)。その自然な面白さを少しでも吸収したいです。あと、野口かおるさんの存在感がすごい! 台本上でのゼーゼー息切れする演技だけで笑えるなんて、唯一無二ですよね。野口さんから何か盗めたらいいなと思っています。

井之脇


野口さんが本当にダークホース! 劇団☆︎新感線での活躍は知っていましたが、一緒にお芝居していて、その面白さに圧倒されています。立ってるだけで笑える存在感は、僕にはないものなので憧れますね(笑)。芸人さん達の間も勉強になるし、シシド・カフカさんが初舞台なのでそのフレッシュさも刺激的。

お互いの印象と関係性

──お互いの印象や、役柄での絡みの見どころを教えてください。

伊藤

井之脇さんは受け答えが大人っぽくて、最初は静かな印象でした。コミュニケーションを取るのが慎重な方なのかなと(笑)。でも稽古初日の本読みでキリトを演じる姿を見たら、想像以上のエネルギーと切り替えの鋭さに「すごい俳優さんだ!」と感動しました。今もどう話しかけたらいいかなと探りつつ、もっと仲良くなりたいです。

井之脇


伊藤さんは映像作品で拝見して、瞬発力のあるお芝居の印象が強かったです。実際にお会いしたら、稽古のオフでは柔らかくてニュアンスのある方。ユリとして戸惑うシーンはもちろん強いんですが、上田さんと話す様子とかを見ると、すごく自然体で魅力的です。実は同い年なので「いつタメ口にしよう?」と悩んでます(笑)。

SFと宇宙への興味、役作りへの影響

──SFや宇宙への興味はどのくらいですか?

井之脇



正直、宇宙オタクではないんですが、映画オタクなので、SF映画はたくさん観てきました。稽古で上田さんが参考として挙げる作品の7~8割は「知ってる!」って感じです(笑)。キリトの宇宙ガチ勢は、ゲームに100万課金するみたいな情熱でイメージしてます。宇宙用語や船内の設定は、身近なものに置き換えて熱量で表現したいですね。

伊藤

私も宇宙に詳しいわけではないけど、SFやファンタジーが大好き。『時をかけるな、恋人たち』で時空を越える役を演じたときも、船内の専門用語を話すのが楽しかったんです。最近プラネタリウムに行ったり、星に興味を持ち始めました。今回は宇宙用語を歌詞で歌うので、しっかり理解して心から届けたいと思っています。

大阪公演への思い

──大阪で舞台に立つことへの思いを教えてください。

伊藤

大阪生まれなので、森ノ宮ピロティホールは思い入れのある場所。帰ってきたなって気持ちになります。大阪公演はいつも日数が短いのが残念だけど、今回のコメディは大阪のお客さんに絶対刺さると思う! 単純に笑えるし、反応次第で舞台の空気が変わるので、みんなとその瞬間を共有したいです。

井之脇


ここ数年、毎年大阪で舞台に立っていますが、大阪のお客さんは本当に温かい。前のめりに観てくれて、スタンディングオベーションしてくれることも。コメディで大阪は少し怖いけど(笑)、上田さんの関西らしい笑いのセンスが漂ってるから、きっと楽しんでもらえるはず。安心して立てる素敵な街なので、今回も楽しみです。

観客へのメッセージ

伊藤


コメディも歌も全部が挑戦で、正直不安もあります。でも個性豊かなキャストの皆さんに引っ張られて、ユリの成長を追いかけるように私も一歩踏み出しています。大阪の皆さんの温かい反応に期待しながら、たくさんの方に観てほしいです!

井之脇



宇宙船を想像するのは難しいけど、劇場って密室で旅をする宇宙船みたいな場所だなって。舞台上のドタバタに巻き込まれて、笑ったり、ちょっとホロッとしたり。一緒に舞台を感じてほしいです。ぜひ劇場に!

【スケジュール】

• 東京公演:2025年5月4日(日・祝)~25日(日) 本多劇場
• 高知公演:2025年6月3日(火) 高知県立県民文化ホール オレンジホール
• 大阪公演:2025年6月6日(金)~8日(日) 森ノ宮ピロティホール

取材・文・撮影:ごとうまき