【秋元順子インタビュー】パワフルに生きる彼女に学ぶ人生哲学

秋元順子
アーティスト
聴くだけで思わず情景が浮かび上がるような豊かな表現力、しなやかで情熱的、魂に響く美しき歌声。超実力派歌手・秋元順子をインタビュー!
2006年に58歳で歌手として華々しくデビュー、2008年に発売されたシングル『愛のままで…』が大ヒット。2008年「第59回NHK紅白歌合戦」には、最年長初出場歌手(61歳6か月)として話題を呼んだ。当時は“団塊世代の星”や“アラ還の星”と称され一世を風靡したが、今もなお、第一線で活躍中。2022年2月23日に発売された「なぎさ橋から」にまつわるエピソード、秋元さんが常に輝き続ける秘訣やプライベートのことなど語ってもらいました。

「なぎさ橋から」前作と今作のラストに表現の違いが!聴き比べることで深みが増す。

数々のヒット曲を手がけ、昨年11月に天国に旅立った作詞家の 喜多條忠氏が、実在する“なぎさ橋”を回想して書いた。当初は「いちばん素敵な港町(2021年5月26日発売)」のカップリング曲としてリリースされたが、楽曲のクオリティーの高さとサビのキャッチーなリフレイン が話題になり、今作では、装いもあらたに AB面入替え、シングルとしてリニューアル。カップリングには「いちばん素敵な港町」オリジナル・バージョン、ピアノ・バージョンが収録されている。

秋元
「いちばん素敵な港町」のレコーディングの時点で、“「なぎさ橋から」をA面にしたい”と呟いていたんです。作詞の喜多條 忠先生や、作曲の杉本 眞人先生も賛同してくださって…。発売後も聴いてくださった方たちから“最後のリフレインが切ない”“是非A面にしてほしい”といった声をいただきました。ファンの皆さまの熱い声もあり、今年2月にアレンジをして録り直し、装いも新たにしリリースしました。
ーー「なぎさ橋から」は、たんにA面とB面がひっくり返ったわけではないと聞きましたが…
秋元
前作の「なぎさ橋から」は、曲の一番には久しぶりに男性に会って楽しい時間を過ごした様子が描かれ、二番では次も元気で会いましょう、という約束をして、バスから手を振る様子、名残惜しそうにする主人公のやさしい気持ちを歌っています。一方今作は、“また会える!”というワクワクする気持ちがなくなり、“あなたとはもう会えない”という別れを決意した気持ちを歌っています。
今作では主人公の心の変化を歌い上げている。また、秋元さんは一つの曲が二通りの歌い方でレコーディングされることは稀だと話す。
秋元
収録の当日に、総合プロデューサーの方から“今回はこの男性とは二度と会えないという思いを込めて歌ってください”と言われたんです。是非両方を聴き比べていただきたい。
ーー前作と今作の違い…、どうして二人はこのような状況になったのか?など、色んな状況が浮かんできますね。
秋元
歌からも女性の雰囲気は見えるのですが、男性の姿は想像できないと思いませんか?ファンの方にはイントロが流れると素敵な情景が浮かぶと言ってくださるんです。私たちの世代は沢山の恋をしていると思うんです。その中でこの歌のような体験を思い出されたり、まさにいま、恋の真っ只中という人もいらっしゃるかと。情景を思い浮かべながら聴いていただき、ご自身でも歌っていただけたら嬉しいです。
ーー作詞家喜多條忠先生、作曲家杉本眞人先生は、秋元さんから見てどのような方ですか?
秋元
私たちには無い才能をお持ちの方たち、尊敬しています。お二人が手がける歌詞やメロディーに、私自身も歌っていて涙が出てきます。喜多條先生は、膨大な数の言葉と豊かな表現力をお持ちの方、もっともっと沢山の詞を書いて欲しかった。「愛鍵(2014年6月4日発売)」の歌詞が出来上がった時の状況を訊ねたら、お風呂の中で思い浮かんだとおっしゃって。ドラマティックで、感情揺さぶられる歌詞が湯船で生まれたってことに驚きました。
秋元
杉本先生は、元々洋楽のバンドを持っていらしたこともあり、洋楽がお好き。幅広いジャンルの曲を手がけてらっしゃいます。洋楽から歌謡曲の世界に来た私に合わせて作ってくださいます。例えば「ティ・アモ〜風が吹いて〜(2016年6月8日発売)」は私のリクエストに応じてラテン調に作っていただきました。

ストレッチと“気まぐれ散歩”は日課

ーー美容や健康のために続けていることは?
秋元
過去にアキレス腱を切る手術をしたんですが、リハビリ中に教わったストレッチは今も続けています。あとは、天候や気分に合わせての“気まぐれ散歩”、お風呂にゆったり浸かって、たっぷり睡眠をとる。あとは、どれだけ忙しくても食事をきちんと作ることを大切にしています。

自分と人生のパートナーのために、どれだけ忙しくても自炊する。

ーー得意料理は?
秋元
私の人生のパートナー(夫)は、食卓に3品4品は必要な人なので、どれだけ忙しくても作るようにしています。ツアーなどに出ている時は、お料理というよりおつまみが多くなることも。冷蔵庫にあるものを見て、ひらめきで作ることが多い。夜少しでもお料理できそうな時は、帰宅前に“今日は居酒屋順子です”と夫に連絡。本当に時間がない時は“今夜はクラブ順子”、たっぷり時間がある時は“レストラン順子”と、時間によって使い分けています(笑)。“レストラン順子”では普段できない煮込み料理を作る事が多いです。
コミュニケーションにユーモアを忘れない秋元さんの人柄が表れている。
ーー結婚して50年、夫婦関係を円満に続けていく秘訣は?
秋元
まずは程よい距離感ですよね。自分の希望ばかりを言わない、相手の希望にも協力体制でいることが大切です。女性が仕事をしていると、つい、これいいでしょ?って言いたくなっちゃいますが、そこは言わない。時間の計算をして無理なものは次に、または相手にお願いするなど、きちんと会話をすることが大切。会話がないことを“カイワレ”と言いますからね(笑)。
と得意の親父ギャグも飛び出す。もちろん、夫とはこれまでに子どもの教育に関して意見が割れたりと紆余曲折はあったという。
秋元
歌手デビューするまでは、二人の子育てをしながら、店を4軒経営し(フラワーショップ3軒、喫茶店)、従業員も8人抱えていた。その状況に加えて夜はたまに歌を歌ってましたから。夫と喧嘩をする暇もなかった(笑)、忙しいことに関しても慣れているんです。今思えば自分でもよくやってたな、と思いますよ(笑)。
ーーなんてパワフル!自分の人生を何かに例えるとしたら?
秋元
自分の人生を振り返ると…“駆け足で世界中を回っている感じ”でしょうか。私は、世界中を回ったくらい素晴らしい体験を沢山してきました。今振り返ると何一つ無駄なことはなかった。

原点であるライブハウスで歌い続けたい

ーー長く歌い続けるために大切にされていることは?
秋元
これからも、私の歌の原点であるライブハウスで長く歌い続けていきたい。もちろん、これまでにも1,000人以上の規模の会場でも歌ってきました。だけどまだコロナが完全に落ち着かない状況下、どのようなシチュエーションの中でも歌い続けられたらと、いつも考えています。だからこそ、ライブのご依頼を受けたときにはすぐに動けるような状態にしていたい。体力、免疫力は落とさずに、今後も健康管理に気をつけて歌い続けますよ!
とにかくパワフルでエネルギッシュな秋元さん、人生の大先輩から様々なアドバイスとパワーをいただける時間となった
インタビュー・文/ごとうまき