Contents
カフェを母体としたアーティストコミュニティの場 天人(アマント)
築130年の長屋を改装したカフェ 多くの人々が集うコミュニティカフェがある。大阪梅田に隣接する街、中崎町。ここはレトロな雰囲気漂う下町、多くの若者達やアーティスト達が集う。130件以上の雑貨店やリノベーションカフェがあり、外国人観光客にも大変人気の観光地だ。雰囲気やイメージは東京で言うと裏原や下北沢と似ているだろうか。昔ながらのレストランや喫茶店、銭湯もあり普通に家もある。ある家の前を通れば開けっぱなしの窓からは昼飯時の良い香りがしてきて、おばあさんとおじいさんの会話が聞こえてくる。そんな昭和の風情を残したこの街には人々の日常と緩やかな時間が流れている。
今でこそ若者を中心にお洒落なイメージがある街だが、20年程前までは都会の中にある田舎だったそうだ。このエリアは大阪空襲で唯一被害が少なかった場所でその焼け残った場所に今もなお古民家が多く残っており、2001年に「空き家プロジェクト」として長屋を改装し、アーティストや人々を巻き込みながら、(集まった数は2ヶ月で1129人だったそうだ)今のコミュニティサロンカフェをオープンした人物に会うことができた。元々はアーティスト達が集い同じ釜の飯を食べてそれぞれが生活できるようにという思いから始まったサロンだ。ここの創業者で代表であり、現在の中崎町の形を(古民家改装のお店など)を作ったパイオニア、JUN AMANTOさんだ。
JUN AMANTOさん
JUNさんは、もともと舞踏家であり、役者としても活躍されていた。「単にお金を儲けるといったエンタメではなく、生活に密着したアートサロンを作りたい」といった想いから同じ役者仲間や、アーティスト達が共に生活し、お金のない人でも出店できたり、夢を叶えられるような場所を作った。またJUNさんは世界中を旅している中で「古き良き日本の生活の良さを再認識し、昔の日本の暮らしを学びながら作品を作りたい」といった想いから中崎町にある長屋を選んだそうだ。このカフェは全て地域の方達の貰い物、拾い物などで構成されている手作りカフェである。例えば店内にあるツタの葉は自然に店内に伸びてきたんだとか。
中崎町に来た当初は自分たちの活動が地域の人たちに認めてもらえるようにと、地域活動や祭りなど地域の行事にも積極的に参加、こうして少しずつJUNさんの活動が地元の人々にも認めてもらえるようになっていった。
コミュニティサロンアマントの活動はまさに公園そのもの。
サロン・ド・アマント天人の活動は多岐にわたる。一軒のカフェとして始まり、CAFEとしての母体を持ちつつ、MIXカルチャー 発信の場としてやってきた。それぞれの道で天職で生きる天下人になる…それが天人(あまんと)という意味だそうだ。今ではその活動がアマント方式と呼ばれるほどに、海外の新聞にも取り上げられソウル市、釜山、全州、光州、香港などでもアマント方式が取り入れられているらしい。
「公園のようなカフェ」がアマントのコンセプト。子どもからお年寄りまで老若男女問わず気軽に集える場所、それがアマント。
緑の葉に覆われたアマントの入り口、まるでトトロの世界を思わせるような入口だ
様々なプロジェクト
サロン・ド・アマント天人は様々なプロジェクトを行っている。
いくつか紹介
アーティスト活動と社会貢献
アマントでは一回がカフェスペース、二階にはシアター劇場やライブ、YouTube用の撮影スペースや、瞑想道場などもある。毎日カフェでは語学教室、ダンス教室などといったさまざまな活動が行われている。
二階にはシアター劇場が。ここでYouTubeの撮影などとして使用されている。アーティストや学生たちが働き、そのお金は地域通貨として発行される。
カフェ運営
カフェは日替わりマスターによる共同運営制をとり、運営スタッフ、共同運営者含め40人以上がその運営管理にあたっている。経営者を目指してる人、いつか自分のお店を持ちたい人にとってはここで経験を積むことができる。
子ども食堂
週1~3回子ども食堂が開かれている。数年前から各地で子ども食堂が増えてきているが、「アマント」は2001年当初から「大家族食堂」と呼ばれる、現在の「子ども食堂」のような活動を行っていた。カフェに遊びにきた子どもたちはドリンク一杯までは無料だそうだ。二杯目からは「お手伝い」をすると二杯目が貰える。そのお手伝いは年齢に応じて、テーブルを拭いたり、食器を下げたりお皿洗いをしたり・・・。2001年当初から遊びに来たり、内装を手伝っていた子どもたちが今ではここのスタッフになっていたりするらしい。どこで聞いたのか子どもたちから代々話が伝わり今も近所の子どもたち中心に集まってくるんだとか。
取材の途中にも、近所の小学生がお茶をしに来た。ここのようにもっと地域で社会全体で子育てサポートが広がったらと願う。
難民支援
JUNさんは難民支援などにも力を入れている。難民の子たちの受け入れをしたり難民申請のサポートなどを行っている。最近でもJUNさんが出会った難民の家族が去年無事に受理されたそうだ。日本は難民認定率が少ない。
タイ上座部仏教の瞑想会
ここではJUNさんがタイでの旅の途中に助けられたお坊さんの兄弟弟子にあたるタイのお坊さんが常駐、瞑想会がカフェの二階で行われている。日本で唯一のテーラーバーダの本格的な瞑想を受けられる。日本語で学べるのはここだけだ。なかにはこの瞑想を受けに長野から通っている方もいるらしい。
オンラインサロン「EART LIFE LABO」
ボランティアに興味のある人など誰かの役に立ち自分も学びのあるサロン
多岐にわたって様々な活動や支援をしているアマント「すべてこの街で起こったことがきっかけで支援をしている。それがきっかけで継続的に広がって行ったんだ」とJUNさん。子ども食堂が始まったのもこの街の出来事がきっかけ、誰もそこに目を向けていない。多くの人々がこういった貧困や社会的弱者などに気づき目を向ける手を差し伸べることによって社会が変わっていくんだと。
店内紹介
139年前の建物、まるで昔にタイムスリップしたかのようだ。
漫画や本がギッシリ。カフェ内で読むことができる。
秘密基地のような空間
シアター劇場に行く階段、さらに上に上がると屋上がある。写真はないが屋上からの眺めは都会の中にあるとは思えないほどの別世界の景色が広がっている。
こちらは、瞑想部屋に行く階段だ。
アマントが「地球平和」の発祥となれたら。アーティストAkikoさんの点描画「スーパーピース」
店舗情報
kansaipress編集部から
実はアマント本店に行く前にここの系列店 カフェバー朱果に偶然入ったことがきっかけで取材させていただくことになった。初めて中崎町に来て取材させてもらった人が中崎町の主と呼ばれているJUNさんだと後になって知った。運いいな、私。JUNさんを一言で表すと「愛の人」だ。その愛の大きさも桁違い。JUNさんが掲げている「地球平和」生きとし生ける全てのものが幸せであるように・・・。どうか一日でも早く新型コロナウイルスが終息し、いつも通りの日常に戻れますように。
取材・文/後藤麻希