【桂雀々 ロングインタビュー】枝雀師匠の哲学受け継ぐスーパー落語で、今年も魅せます、驚かせます!

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桜が咲き誇る時季、『春爛漫公演 桂雀々独演会』が大阪・新歌舞伎座にて4月1日(土)に開催される。ゲストには、最もチケットのとれない落語家と名高い柳家喬太郎を迎え、ひるの部、よるの部の二部で上演。大劇場ならではの廻り舞台やセリを駆使した”スーパー落語″で1,500席の会場を大爆笑の渦へと巻き込んでいく!演目は、ひるの部が「舟弁慶」、よるの部に「口入屋」の2席ずつ。1993年〜1995年にかけて枝雀師匠に直接稽古をつけてもらったという両演目、桂枝雀の哲学が色濃く受け継がれている。今回も桂雀々に独演会に向けての意気込みを語ってもらった。

伝承芸能、師匠のエッセンスを色濃く残したい

——「舟弁慶」「口入屋」それぞれ演じる上で意識されていることは?

桂雀々
「舟弁慶」は、今で言う天満橋の辺りが舞台。夏の雰囲気をどこまで見せられるか、そしてメインの女将さんのキャラクターをどこまで引き立てられるかといった表現を考えています。「口入屋」はハイライトが真夜中になり、真っ暗闇の中、何が起こるのか、展開されるのか、お客さまの想像力をうまく引き出していけたらいいと思っています。新歌舞伎座ならではの舞台装置や照明を効果的に使いながら、今までにない新鮮な表現方法でお客さまを驚かせたい。いつも試行錯誤してトライしています。

人物の作り方が大事

——両演目は、枝雀師匠の十八番とのことですね。

桂雀々
師匠は夏に「舟弁慶」、秋に「口入屋」をよく口演していました。この二席はどちらも長く、手強いネタです。噺家によって物語の捉え方、演じ方も違います。僕はずっと師匠の高座を舞台袖で聞いてきたので、すぐに演じられると思っていましたが、それは大きな間違い。聞いているだけでは、そう簡単に習得できませんね。そこで、実際に舞台で演じ、回数を重ねながら何とか自分のものにしてきたと思います。「口入屋」のストーリーはある女性を巡り、番頭さんたちが男性の本能をむき出しにしてとんでもないことを仕掛ける噺。現代の社会に置き換えるとセクハラもいいところでしょう。ただ、この噺は、それぞれのキャラクターが面白い。僕は登場人物の個性を作るうえでドラマや映画を参考にすることが多いんです。役者さんたちの目線や表情はすごく勉強になります。それらを落語に取り入れることで、人物の奥深さが出来てくるのではと思っています。お客さまには表情の一つひとつも楽しんで頂きたいと思っています。

理想としていた枝雀の落語に近づきたい。

桂雀々
枝雀師匠の軽快なリズムの心地よさ、あのニチャっと笑うと、全て許してくれそうな人ったらしな表情…、師匠の落語に少しでも近づきたいと、背中をずっと追ってきました。師匠のエッセンスはずっと残していきたいんです。師匠のファンの方が僕の落語をご覧になったときに、”やっぱり師弟だ″と思ってもらえたら最高です。桂枝雀を彷彿させるような落語を伝え続けていくべきだと僕は考えます。そもそも師匠も僕も、似たところがあるんです。高座で一度調子が乗ってしまうと、そのまま突っ走ってしまう。お客さまを置いて自分自身が熱くなって楽しんでしまう。変なところが似てるんだなと、やっぱり親子(芸での)なんだなと自分自身、ちょっと嬉しかったりしています。

1人のファンとして柳家喬太郎さんの世界観を見てみたい。

——ゲストの柳家喬太郎さんは、雀々さんにとってどんな方ですか?

桂雀々
江戸落語、古典落語、新作落語オールマイティーに演じられ、表現の仕方も僕とは全く違う。喬太郎さんは芸歴こそ僕より若干浅いですが、演じ手として素晴らしいものをたくさん持っていて、実はひそかに憧れている存在。無いものねだりなんです。喬太郎さんの落語はまるでドラマを見ているような臨場感があり、観客をぐいぐい魅了していく。特に人情噺ではお客さまの涙を自然と流させてしまうところが憎い。とにかく巧いんです。そんな彼が、今回ゲストで来てくれるのは非常に嬉しいですね。新歌舞伎座のような大劇場で、どのような喬太郎ワールドを作ってくれるのだろう?と思うと、彼のいちファンとしても楽しみで期待しかないですね。東京には喬太郎さんのような才能豊かで魅力的な噺家が沢山いる。そんな環境に身を置くことで、僕は刺激をもらっています。彼がどんなネタを披露してくれるのか、今から楽しみで仕方ないですね。

——今回の独演会も爆笑に期待ですね!

桂雀々
爆笑を意識しているわけではありませんが、上方では人情噺というより笑いを求められていることが多いですよね。僕に対し、キャッチフレーズで“上方落語の爆笑王”って書かれたりしますが、一体誰が決めたんでしょうね(笑)。とはいえ爆笑王という名に負けないように頑張るしかないかなと(笑)。いつも、びっくりさせられるような落語を常に目指しています。驚くと思い出に残るし、そしたらまた聞きに行きたいと思ってもらえますから。

大阪でも、もっと活躍の場を増やしていきたい。

——客観的に見て、現在の上方の若手、中堅の落語家さんの活躍についてどのように感じておられますか?

桂雀々
70代、60代も現役で活躍されておられますが、40代の落語家の層が薄いように感じています。僕が上方落語協会に入門した時が、ちょうど100番目。戦後10人もいなかった上方落語の数は今では290人ほどになりましたが、人数が多くなっただけで分散しているようにも感じます。50人ぐらいだった時が一番盛り上がっていた時ではないでしょうか。僕は、拠点を東京に移してますが、決して大阪を捨てたわけじゃない。もっと地元大阪でも活躍したいと思っています。新歌舞伎座での1,500席での落語会というのは大イベントですから、大劇場ならではの空気感を満喫してもらいたい。それとは別に200席ぐらいの会場では熱いライブ感も体験してもらえたら嬉しいですね。

——新歌舞伎座での公演の意気込みを。

桂雀々
4月1日は新歌舞伎座での独演会。普段の寄席小屋で見る落語会とはまた違った魅力があります。この独演会は、2018年から新歌舞伎座で独演会をさせてもらい、6年連続で舞台に立たせて頂いております。始めは大箱で演じることに一抹の不安もありましたが、なにせ今年で6年目。見せ方も随分慣れてきました。大きな劇場ゆえに遠く感じていたお客さまが近くなった感じがし、手応えを感じています。開催日には大阪も春爛漫、きっと桜も満開です。是非皆さまお越しくださいませ!

落語だけでなく、雀々の生き様にも常に驚かされる。大御所と呼ばれる地位についてもなお、挑み続ける上方落語家・桂雀々は、枝雀師匠の落語を継承しながら、唯一無二の“上方爆笑王”として、これからも進化し続けていくのだろう。

公演概要・チケット

春爛漫公演 桂雀々独演会
公演期間 2023年4月1日(土) 12:00/16:00開演
料金 (税込)
S席(1・2階) 5,000円
A席(3階) 3,000円
特別席 7,000円

チケット:春爛漫公演 桂雀々独演会 ○一般発売 | 新歌舞伎座ネットチケット[演劇 寄席・お笑いのチケット購入・予約] (pia.jp)

電話:06-7730-2222(午前10時~午後4時)

インタビュー・文・撮影/ごとうまき