【インタビュー】天童よしみ「人生という旅路の先に見えるもの」

インタビュー

昭和シリーズの「その先」へ――。ファンに寄り添うエール

――新曲『旅路』、素晴らしい楽曲ですね。前作からの「昭和シリーズ(昭和かたぎ・昭和ごころ)」を経て、今作は「昭和シリーズのその先」という位置づけですが、この三部作は天童さんにとってどのような「旅」でしたか?

天童
本当に手応えのある、意味深い旅でしたね。今の時代、演歌・歌謡曲を取り巻く環境は決して楽ではありません。「昔のようにCDが売れない」なんて話も耳にします。そんな中で、どうすれば皆さんの心に歌を届けられるか、それが一番の課題でした。今回の三部作で大切にしたのは、「難しく歌いすぎない」ということ。私の歌を愛してくださるファンの皆さんに、もっと近くに寄り添いたい。「天童よしみがいつもそばにいるよ、だから頑張って」というエールを送りたかったんです。

――その想いは、若い世代にも届いているようですね。

天童
そうなんです! 毎年開催しているカラオケ大会の決勝戦に、驚くほど若い方たちが出場してくれるんですよ。ご年配の方に負けじと、私の歌を一生懸命練習して、ステージで輝いてくれる。その姿を見るのが、何よりも嬉しいですね。実は今回、9月に開催するカラオケ企画『天童よしみカラオケ天下一決定戦』では、趣向を少し変えてみたんです。これまでは課題曲を1〜2曲に絞っていましたが、今回は「天童よしみのカラオケ人気曲10選」から選べるようにしました。『道頓堀人情』や『珍島物語』など、皆さんにはそれぞれの思い入れで選んで挑戦して頂きたいです。そして、9月12日にはそれぞれの課題曲の優勝者が一堂に会してチャンプ・オブ・チャンプを競い合うんです。だから“天下一”!。今から皆さんの歌声を聴くのが、楽しみで仕方ありません。

天童よしみ_カラオケ大会2026概要

「一人では生きられない」支え合うことの尊さ

――新曲『旅路』は、出逢い、共に生きる日々、そして別れ……。人生の縮図のような構成になっています。歌う際に、特に意識されていることはありますか?

天童
人生の旅路って、自分で切り拓く部分もありますが、やはり「支え合い」が一番大切だと思うんです。一人では絶対に乗り越えられなかった壁も、支えてくれる人がいたから幸せに歩んでこれた。別れの寂しさはあっても、共に生きた日々を確かな思い出として心に刻み、自立して強く生きていく。そんな「温かな強さ」を、フレーズ一つひとつに込めています。

――「支え」という言葉で思い浮かぶ、天童さんにとって欠かせない存在といえば……。

天童
やはり、母ですね。父は他界しましたが、母は今93歳になります。今も「娘と一緒に頑張りたい」という強い思いを持って、私のそばにいてくれる。自分の楽しみをすべて私にかけてくれた母には、感謝してもしきれません。だからいつも約束しているんです。「無理せず一緒に頑張って、美味しいものをいっぱい食べようね」って。

――93歳! お元気の秘訣は何だと思われますか?

天童
「人と接すること、会話すること」を大切にしているからでしょうか。母は、病院や美容院に行く時も、きちんとお洒落をしてメイクをするんですよ。「先生に顔色が見えないじゃない」なんて私が言っても、「きちんとしていくのが私の流儀」なんですって(笑)。そういう「張り合い」をなくさない姿は、娘の私から見ても素敵だなと思います。

カップリング曲『花影』への特別な想い

――カップリングの『花影』も、非常に情念の深い名曲ですね。

天童
実は私、この『花影』が大好きで! レコーディングの時、ディレクターさんに「これ、A面(メイン曲)にしませんか?」って相談しちゃったくらいなんです(笑)。別れた後の女性の未練や思い出が描かれているんですが、どこか「泣ける節」がいっぱいあって……。自分でも「こういう世界が、私らしいのかな」と感じる部分があるんです。

――歌詞の中にある「一生一人を通せるか、そっとお酒に聞いてみる」という一節。以前の取材で、天童さんが28歳の時に「歌と共に生きる」と覚悟を決められたお話を伺いましたが、その決意と重なるような気がしました。

天童
そう言っていただけるとドキッとしますね(笑)。やっぱり歌には、自分自身が投影されます。自分を入れないと嘘になってしまいますから。体験してきたことや、抱えてきた孤独。そういうものを歌に託しながら、自分自身を励ましているところもあるのかもしれません。今回の制作チームである水木れいじ先生、水森英夫先生とは、私が28歳で『道頓堀人情』を出した頃から、何十年というお付き合いです。私のこれまでの歩みを一番知ってくださっている先生方。レコーディングで昔話をしながら歌を作る時間は、私にとって至福の時なんです。

55周年に向けて――。進化し続ける「喉」と「骨」

――45周年の際、「ここがスタートラインだ」とおっしゃっていました。現在は芸歴54年目。今の心境はいかがですか?

天童
やっと「いろんなことができるな」と思えるようになりました。一昨年あたりから、ステージの中でクラシックやミュージカルの要素を取り入れたり、今までとは全く違う表現に挑戦しています。

昨年は東京国際フォーラムで、100曲(アンコールを含めて101曲)を歌い切るコンサートを行いました。自分で先頭を切って「どこまでやれるか」に挑戦したことで、逆に新しいファイトが湧いてきましたね。来年の55周年に向けて、今はワクワクが止まりません。

――その驚異的なスタミナと喉を支えるケアは、やはり徹底されているのでしょうか?

天童
喉に関しては、祖母から教わった「はちみつ大根」を何十年も続けています。大根を小さく切って、はちみつに漬け込んで……。あの浮き上がってきたエキスが、喉の粘膜を本当に良くしてくれるんです。あとは、体力作りですね。今も変わらず階段の上り下りなどのトレーニングを続けています。この間、骨密度の検査をしたら、先生に「よしみさん、若い人と同じ数値ですよ! 少々のことでは折れません」って太鼓判を押されて(笑)。お墨付きをいただいて、さらに自信がつきました。

AI時代だからこそ、浮き彫りになる生の歌の価値

――最近ではAIで過去の声を再現する技術も進んでいます。美空ひばりさんのAIプロジェクトにも携わられた天童さんですが、今の時代の「技術」と「歌」についてどう思われますか?

天童
ひばりさんのAIステージを拝見した時、ファンの方々が号泣される姿を見て「会えないと思っていた人に会えた」という感動の大きさを痛感しました。それはAIにしかできない素晴らしい貢献だと思います。私のAIもYouTubeで見かけたりしますが、時代の進化には驚くばかりです。もし私がAIで何かするなら、15歳のデビュー当時の自分とデュエットしてみたいですね。当時の自分は、今の私にとって最大のライバルですから。

――それでも、やはり「生身の歌手」にしかできない表現がある。

天童
そうですね。それは「伝える力」と「呼吸」です。目の前にお客さんがいて、私が一言話し、演奏が始まり、歌い出す。その瞬間に会場の空気がガラッと変わる。あの「阿吽の呼吸」は、生きている人間同士にしかできない、ライブにしかない証拠です。

――最後になりますが、新曲『旅路』を携えて、これからどのような景色を見せていただけますか?

天童
演歌・歌謡曲というのは、大先輩たちが築き上げ、歌い継いできた日本の宝物です。人生の中で、壁にぶつかったり、悩んだりした時に、凛として立っているのが演歌なんです。時代がどれだけ変化しても、大切なものを忘れない。人間の奥底にある温かさや優しさが滲み出るような、そんな歌をこれからも届けていきたいですね。55周年に向けても、マンネリにならず、シンプルに「今の天童よしみ」を皆さんに伝えていければと思っています。

カラオケ大会応募フォーム

https://form.run/@tenkaichi

■商品情報

天童よしみ with ガーディアンズほっぺちゃん「ほっぺちゃん音頭」

2026年2月25日デジタル配信

天童よしみ「旅路」c/w「花影」

2026年1月28日発売:TECA-26002 定価¥1,500(税込)

「旅路」作詞:水木れいじ/作曲:水森英夫/編曲:猪股義周

「花影」作詞:水木れいじ/作曲:水森英夫/編曲:猪股義周

■インフォメーション

天童よしみ オフィシャルサイト https://www.yoshimi-tendo.com/index.html

天童よしみ テイチクレコード https://www.teichiku.co.jp/teichiku/artist/tendo/

天童よしみ公式「なめたらアカンちゃんねる」https://www.youtube.com/@yoshimi_tendo

 

【インタビュー後記】

圧倒的な歌唱力とは裏腹に、少女のような純粋さでお母様の話をされる天童さん。その温かさが、あの魂を揺さぶる歌声の源だと思います。新曲『旅路』。それは、私たち一人ひとりの人生に優しく寄り添う、最高のエールになるはずです。

インタビュー・文・撮影:ごとうまき